血縁骨髄提供者(ドナー)の皆様へ


 この度は骨髄提供にご協力頂き誠にありがとうございます.今後皆様が受けられる検査や処置につき,説明申し上げます.不明な点,疑問な点はご遠慮なく担当医にお尋ね下さい.

1)骨髄移植

 骨髄移植とは,大量の抗癌剤や放射線照射により患者さん体内の悪性細胞や機能不全の骨髄を徹底的に根絶し,その後正常の造血幹細胞(皆様から採取させて頂くのはこの造血幹細胞で,血液の元となる細胞です)を静脈内投与することにより骨髄の再構築をはかる治療法です.ドナーの皆様から提供して頂いた正常な骨髄を患者さんに移植するため,抗癌剤の主な投与量制限因子である骨髄機能低下を克服でき,より強力な治療を可能とし,難治性血液疾患の治癒の可能性を高くし得る治療法となりました.

2)術前検査(骨髄採取の約3-4週間前)

 安全に移植ができるように,ドナーの皆様の健康状態を検査致します.検査の目的は2つあり,1)ドナーの皆様の安全と,2)移植を受けられる患者さんの安全のためです.検査内容は,血液検査(一般検査,梅毒,B型肝炎,C型肝炎,エイズ等),出血時間,検尿,心電図,呼吸機能検査,レントゲン検査などです.検査日は担当医と相談して決めて頂きます.これらの検査に異常を認めた場合,移植を中止することがあります.

3)自己血採取(骨髄採取の約3週間前)

 骨髄採取後のドナーの方の貧血を補う目的に,輸血部で自己血を約400-800ml採取致します.採取した血液は保管しておき,骨髄採取後必要に応じてドナーの方に戻します.自己血採取後,鉄剤を服用して頂きます.鉄剤の服用後,便が黒くなることがありますが心配ありません.また服用に伴い胃のむかつきがでる場合があります.この時は必ず担当医にご相談下さい.なお胃薬(制酸剤)を常時服用されている方は担当医にお申し出下さい.内服時の指示を受けて頂きます.(鉄剤の吸収が阻害されてしまうからです.) 自己血採取前日は充分に睡眠をとり,当日は必ず食事を召し上がってきて下さい.

4)骨髄採取

 骨髄採取日の2日前(通常は火曜日)に入院して頂きます.入院前日(通常は月曜日)の午後に当院から入院の連絡があります.入院後は病棟担当医および麻酔科医の診察などがあります.麻酔科医の診察は夕方になると思われますので,午後過ぎからは病室をお離れの際は看護婦に一声おかけください.採取前日は手術部位(両側の腸骨,腰) や顎鬚の剃毛を行います.前日の夜9時以降は絶飲食となります.
 採取当日(通常は木曜日)は手術室入室となる朝8時半頃から,病室にお戻りになる午後1時頃までは必ず御家族の方に病室で待機して頂きます.手術室前には御家族の方がお待ちになる場所はありませんので,病室にてお待ち下さい.
 早朝に安定剤などを内服して頂き,朝8時20分頃に病室を出発して手術室に向かいます.手術室入室後にまず酸素吸入を致します.安全に手術が施行できるよう,その後点滴を開始致します.点滴を開始すると皆様は眠くなり意識がなくなります.その後,口から肺まで気管チューブを挿入し全身麻酔をかけます.この際ごく稀にチューブが当たって弱い歯が折れることがあります.歯はあらかじめ治療しておくとよいでしょう.顎鬚があると気管チューブと固定が不安定となり,麻酔中の危険性が増します.そのためあらかじめ顎鬚は剃っていただきます.その後,膀胱にカテーテルを,鼻から胃チューブを挿入致します.(胃チューブは手術終了後ただちに,膀胱カテーテルは手術翌日に抜去致しますが多少違和感があるかも知れません.) 手術は約2-3時間で終了し,その後手術室内の回復室で終了直後の経過を観察し病室に帰ります.手術終了後翌朝まで抗生剤の投与や輸液を行い,翌日に点滴を抜去致します.点滴終了後は,抗生剤を1週間,鉄剤を約1ケ月間服用して頂きます.術後翌朝までベット上安静にして頂きますが,翌朝から歩行可能となります.食事もこの時から摂取できます.飲水は手術当日の夕方,お腹の蠕動運動が確認できた場合に可能となります.
 また術後に採取部の腰痛,咽頭痛を伴うことがあります.痛みの程度には個人差がありますが,1週間以内にほぼ消失します.完全に痛みが取れるのには1ヶ月位要します.腰痛に対して痛み止めを用意していますので,随時希望して下さい.また術後咽頭の炎症の緩和目的に,吸入薬を投与致します.
 退院は原則的に術後翌々日頃(通常は土曜日)に可能ですが,術創の消毒や術後経過観察のために退院後も何度か通院していただく必要があります.社会復帰,シャワーは術後4-7日後頃(通常は月-木曜日)から可能になります.入院および諸検査の費用はすべて患者さん負担となり,ドナーの方への請求はありません.

5)骨髄提供による危険性

 骨髄採取は手術室にて全身麻酔下で行います.骨髄液は腸骨(骨盤の背中側)より直径約3mmの針にて採取されます.メスは使いません.骨髄採取量は患者さんの体重1kgあたり約3x108(3億)個の有核細胞を目安に採取し,500-1000mlになると思われます.正常な骨髄機能をもつ皆様には許容範囲の採取量ですからご安心下さい.骨髄液採取に伴い貧血が生じることがありますが,その他の血液成分である白血球や血小板にはほとんど影響ありません.あらかじめドナーの皆様から自己血を採取してありますので,貧血の程度に応じてその御自分の血液をお戻しします.原則的には他人からの輸血を受けることはありませんが,予想以上の貧血が出現し自己血の投与のみでは貧血の改善が得られず,生命の危険がある場合には,やむを得ず同種血の輸血を行う事があります.
 手術の安全性について説明致します.全身麻酔に伴う合併症は1)麻酔中の機械的なトラブル,2)麻酔薬アレルギーによるトラブルなどがあります.麻酔に伴うトラブルに対しては,われわれは麻酔科医と協力し万全の体制をひいており,術中は麻酔科医が責任をもって麻酔の管理を行っています.一般的に全身麻酔をかけた場合,10万件に1件の確率で死亡事故が発生すると言われています.しかし当院ではあらゆる手術を施行していますが,過去1度も全身麻酔に伴う死亡事故は発生しておりません.しかし過去にドナーの死亡事故が日本でも1例発生しています.術後の咽頭痛,採取部腰痛はほぼ全員に見られます.まれに肝障害なども見られることがありますが,通常これらは一過性でまもなく消失します.他院で採取された骨髄バンクのドナーに術後ウイルス肝炎が発症したという報告があります.

6)同意

 骨髄提供に関して御家族と十分にお話し合いになり,御家族全員の理解を得てください.当科ではドナーの両親のみならず,配偶者の同意を必須条件としています.御家族や配偶者の方にも直接私たちから説明させて頂きます.

7)ドナー保険

 骨髄採取に関わる万が一の事故のためにドナー保険があります.遅くとも骨髄採取日の10日前までにお申し込み頂けると加入することができます.詳細は株式会社厚生会(電話 03-3255-6314,FAX 03-3255-6315)へお問い合わせください.

8)ドナーの皆様へのお願い

 骨髄採取日にはすでに患者さんに大量の抗癌剤・放射線が投与されています.つまり患者さんは皆様の骨髄が供給されないと生存不能の状態になっていると言っても過言ではありません.是非健康状態には十分に注意し,風邪をひいたり交通事故などで手術が中止とならない様よろしくお願い致します.

 以上,皆様からご提供頂いた骨髄は,誠心・誠意をもって患者さんのために活用させて頂きます.われわれスタッフ一同,皆様のご協力に心から感謝し,お礼申し上げます.

2000/01/15