診療内容

■ 呼吸器
原発性肺癌をはじめとする肺疾患や、縦隔・胸壁疾患の手術を行います。積極的に内視鏡手術の技術を取り入れ、低侵襲で、かつ根治性と安全性が高い手術を提供しています。比較的早期の原発性肺癌では標準術式である肺葉切除＋リンパ節郭清を、約1.5�僂僚�を側胸部に4つ（肺を取りだすために最後に少し1つの傷を広げます）程で手術し、約1週間の入院です。原発性肺癌のほかには、転移性肺腫瘍、良性肺腫瘍、気胸や嚢胞性疾患、胸部外傷、膿胸や炎症性疾患（結核・非定型抗酸菌症など）、重症筋無力症や胸腺腫をはじめとする縦隔腫瘍、横隔膜や胸壁の腫瘍などが対象疾患になります。このように扱う疾患は多種、多様で、呼吸器内科とも連携しつつ集学的治療を行います。高齢者や心臓・腎臓疾患、糖尿病などの合併症があり、手術が困難な場合もありますが、総合病院の強みを生かして積極的に治療に取り組んでいます。
■ 大腸・肛門
当科では年間170件以上の大腸癌手術を行っており、進行癌でも根治性を損なわない様、積極的に腹腔鏡手術を導入しています。また、肛門に近い癌の場合でも、可能な限り永久的人工肛門にならないよう、肛門温存手術を手がけております。人工肛門の患者さんに対しては、ストーマ専門外来を設け、ストーマ専門看護師を中心に十分なアフターケアに努めています。 ステージIaまでの早期癌に対しては内視鏡科医との連携の元、大腸内視鏡を用いた切除（EMR, ESD）を行っています。 内痔核（いぼぢ），裂肛（きれじ），直腸脱などの肛門疾患は肛門専門外来を設け、侵襲の少ない治療を行っています。


■ 肝胆膵
内科、放射線科、内視鏡科などと同一疾患に対して連携をとり最適の治療を選択する集学的治療を行っております。胆石症は腹腔鏡下手術が基本ですが希望により適応内であればお臍からのみの穴にて手術を行う方法も施行します。胆嚢炎を併発しているときは、適応内であれば腹腔鏡下胆嚢摘出術を早期に行ったり、一時的に炎症をとる処置後胆嚢摘出術を施行しております。また胆管結石併存例では内視鏡的結石除去術後すみやかに胆嚢摘出術を施行しております。肝腫瘍は背景の肝機能やステージによってラジオ波凝固、血管閉塞療法、手術を各科のスペシャリストが対応しております。胆道がん、膵がんには根治切除が第一優先ですが、切除不能例に対しては、術前化学（放射線）療法を行い、その後に手術を行う方法も実施しています。肝、膵切除に腹腔鏡手術を導入しておりますが全例軽快退院しております。年間約肝切除30例、膵切除30例、胆嚢摘出術約100例を含め200例以上の手術を施行しております。肝胆膵の高度な手術には最新のハイテクナビゲーション手術室を使用しコンピューター支援手術（ナビゲーション手術）を行っており、疾患の根治性と手術の安全性の向上を目指しております。


■ 乳腺
当乳腺外科は日本乳癌学会認定施設として専門医と担当医によるチーム医療で、世田谷・多摩南部地区の中心的役割を担っています。超音波検査、マンモグラフィーなど従来の検査法に加え、穿刺吸引細胞診、針組織生検を駆使し、院内の病理部門で検査し、CTやMRI検査も併用し、より精度の高い診断を行っています。また術前より特殊染色病理検査を行い予後の予測により適切な化学療法やホルモン療法などの補助療法の必要性を判断し、各患者さんに適した最良の治療法を提供しています。近年、乳癌の治療は乳房のみの手術だけにとどまらず根治性を求めるため、場合によっては全身病として扱われ、あらゆる治療法を組み合わせた集学的治療が肝要とされています。当院では総合大学病院の利点を生かし、放射線科、歯科、婦人科、脳外科、内科など様々な診療科や薬剤部、栄養科など多種分野の専門家の協力を得て、いかなる状態にも対応できるよう集学的治療を目指しています。さらに乳癌認定看護師はじめ癌化学療法、緩和ケア、癌性疼痛など専門性を生かした認定看護師にも参加していただき患者さんに病状そして治療内容をより理解し、安心して治療に専念していただけるよう心掛けています。現在乳癌の手術療法は大きく分けて、全摘術と温存術に分かれます。各種検査診断に基づき最適な方法を提供し、希望に応じた方法を選択、術後も必要な場合は放射線治療も院内で行っています。また術前リンパ節転移の可能性がない場合、リンパ浮腫などの弊害がみられる腋窩リンパ節廓清術を省略できるセンチネルリンパ節生検術も行っています。整容性が求められる場合、形成外科による乳房再建術も積極的に推奨しています。乳癌の手術と同時に行ったり、時間がたってあとから行ったり、自己組織や人工物を使用するなどすべて健康保険にて行えます。当院における乳がんの治療は、最新の標準的治療法を行いさまざまな病態に対応できるよう総合的に、集学的にそして個々に合った最適な方法で行えるようにしています。また近隣医療機関との連携をより一層深め、地域医療に貢献できることを目指しています。


■ 血管
血管外科が扱う疾患は、心臓、脳以外の全ての血管病が治療対象となります。具体的には、腹部・胸部大動脈瘤「動脈のこぶ」や、閉塞性動脈硬化症「下肢の血管が細くなり、歩行時の疼痛、壊疽をきたしたもの」、脾・腎・肝等の内臓動脈瘤、頸動脈狭窄、下肢静脈瘤などに対する治療を行っております。高齢化や食文化の欧米化から、これら血管病は急速に増加しております。そして、その治療法も劇的に変化を遂げてきております。従来の外科的治療から、低侵襲な血管内治療へと治療の主体がシフトしてきているのが現状であります。腹部・胸部大動脈瘤に対しては、人工血管置換術からステントグラフト内挿術へ、閉塞性動脈硬化症に対しては、バイパス術からバルーン拡張/ステント留置術、内臓動脈瘤（脾動脈瘤、腎動脈瘤、肝動脈瘤等）に対しては、瘤切除術からコイル塞栓術、頸動脈狭窄に対しては内膜剥離術からステント留置術、下肢静脈瘤に対してはストリッピング術からレーザー焼灼術といったように、我々が扱う全ての疾患に対して、外科的治療と、血管内治療が存在します。これまで、高齢、もしくは、合併症が多くリスクが高いといった理由で治療が受けられなかった患者さんにとって、低侵襲で、より安全な治療を行うことが可能となっております。 当院での血管外科の外来は、第2、4週の木曜日に行っております。ここでは、治療が必要か否か、治療を行うとしたら、どのような治療法があり、どの治療が適切かを判断させていただきます。第三病院では血管外科の手術は、現在行っていないため、それぞれの治療に適切な施設を紹介させていただいております。お気軽にご相談ください。


■ 鼠径ヘルニア・腹壁ヘルニア
鼠径ヘルニアは日本で年間約１６万件の手術が行われるありふれた疾患ですが、嵌頓（かんとん：ヘルニアのなかに腸がはまりこむこと）が起こると重症化することがあります。当科ではヘルニア専門外来を設け、年間約200件の手術を行っております。また、他施設の医師にも手術教育を行うヘルニアトレーニングセンターに認定されています。手術はメッシュを用いたテンションフリー法であり、2泊3日の入院を基本としています（1泊2日も可能です）。 当科外来受診時にお渡しするパンフレットがご覧いただけます。 どうぞお気軽に相談してください。 腹壁瘢痕（ふくへきはんこん）ヘルニアはおなかの手術の後にきずが膨らむヘルニアです。鼠径ヘルニアとは異なり嵌頓の頻度は少ないですが。大きくなるとボディーイメージがくずれ、呼吸機能に影響を及ぼすことがあります。当科では腹壁瘢痕ヘルニアには腹腔鏡手術で修復を行っており、術後数日から1週間程度でお帰りいただけます。