診療科・部門

産婦人科:診療内容

産婦人科全般について各々の専門医が高度な知識と技術をもって診療を担当しています。曜日によって初診の担当医(診療部長、副部長、医長)が決まっていますが、必要があれば各専門外来にて診療します。なお、2001年11月に新しく総合母子健康医療センター(母子センター)が開設され、小児科(未熟児科)、小児外科を含め慈恵医大の総力を結集して母子の集中管理がより一層充実しました。

腫瘍部門

子宮筋腫

年間250件の手術例があり、一般的には腹式あるいは膣式の単純子宮全摘術が行われていますが、未婚で子宮温存を希望する場合は筋腫のみを摘出する筋腫核出手術を行っています。近年では腹腔鏡を補助に用いる膣式子宮全摘術(LAVH)により、膣式手術の適応が拡大される傾向にあります。また粘膜下筋腫に対しては経膣的にレゼクトコープによる摘出も施行しています。手術療法以外では放射線部と協力して子宮動脈塞栓術(UAE)を行っています。

子宮頚癌

年間手術例は約50件です。上皮内癌(0期)は円錐切除、子宮全摘術を基本としますが、LEEPによる切除も普及しています。微小浸潤癌(Ia期)では病変部の状況に応じ円錐切除、単純子宮全摘術、準広汎子宮全摘術が適応となり、リンパ節転移が認められた場合は、放射線による後療法を追加します。

子宮体癌

年間手術件数は40件程です。術前MRI検査による子宮筋層内浸潤度と術中腹腔内迅速細胞診などにより体癌の進行期分類を診断し、各進行期に応じ術式を決定しています。

卵巣癌

年間手術件数は50件です。超音波、CT、MRI、の各種画像診断と複数の腫瘍マーカーを組み合せ、術前に腫瘍の進展状況を診断し、進行の度合いに応じ、予定術式を決定します。若年者の初期(Ia期)では卵巣摘出術にとどまることもありますが、進行卵巣癌に対しては内性器全摘術、大網切除術、骨盤内・傍大動脈リンパ節郭清を行い、腸管浸潤例では腸管合併切除術を行います。進行例に行う術後化学療法は、白金製剤が主体となりますが今日ではタキソールも第一選択薬として用いられています。
5年生存率はIa期95%以上、Ic期約90%、II期約60%、III期約50-60%。

腹腔鏡手術

内視鏡手術は年間約200症例(全手術の25%)に施行しており、主に良性卵巣腫瘍(卵巣のう腫など)や子宮腫瘍(子宮筋腫や子宮腺筋症)に対する手術の際に選択されます。また、子宮内膜症や子宮外妊娠、不妊症に対しても施行しております。手術侵襲が少なく、短期入院での治療が可能です。

その他

若年者の巨大卵巣腫瘍に対し、皮膚小切開下に内溶液を漏出させることなく腫瘍内容を穿刺吸引する新機器を開発し、手術に適応しています。またいずれの手術でも、輸血の必要性が予想される場合には自己血輸血の導入を積極的に行っています。術後の疼痛コントロールのため、硬膜外麻酔も行い成果を上げています。癌化学療法は短期入院にて周期的方法を適用しています。緩和医療に対する取り組みも始まり、よい環境で、治療を受けられる体制づくりを行っています。

不妊・内分泌部門

不妊症

年間で約300周期のAIH(人工授精)及び、IVF(体外受精)では約200周期の採卵を行っております。IVFの大半はICSI(顕微受精)か、あるいは通常のIVFとICSIの併用(Split ICSI)で行っております。日本産科婦人科学会の会告に従って凍結融解胚移植も積極的に行い、多胎妊娠例の発生を減少させるように心がけています。無精子症に対しては、泌尿器科と協力して睾丸等から採取した精子でICSIを行うTESE-ICSIも実施しています。

思春期異常

思春期の月経異常(原発性無月経、続発性無月経、若年性出血、月経困難症)などを中心に診療しています。ダイエットや運動による体重減少性無月経が大部分を占めています。

反復流産・不育症

流産や死産をくり返す症例に病態別に、アスピリン・ヘパリン療法などの抗凝固療法や夫リンパ球療法(免疫療法)を行い、その成功率は約80%です。

子宮内膜症

ホルモン療法、手術療法(内視鏡下レーザー焼灼等)、超音波下の薬物局所注入等を患者様の病態に合わせて選択しています。月経痛などの症状軽減、妊孕性の回復等を主な目的としており、良好な治療成績を得ています。特に不妊症を合併した内視鏡下手術は、術後の妊娠率が35%と良好です。

更年期障害

DEXAによる骨塩定量、ホルモン測定などを施行しながら、症状に応じたホルモン補充療法(HRT)を施行しています。また悪性腫瘍術後の卵巣欠落症状に対しては、再発の有無をフォローアップしながら慎重にHRTを選択しています。

周産期部門

妊婦管理

分娩数は年間約800例であり、正常のみならず様々な合併症妊娠に関しても他科との連携をとりながら妊娠管理を行っています。合併症妊娠では、主として腎炎、糖尿病、甲状腺疾患、自己免疫疾患、呼吸循環器疾患、癲癇などの精神疾患合併妊婦の妊娠管理を行い、安全に分娩ができるように配慮をしています。超音波検査、母体血清マーカー、羊水検査、MRI検査などを用いた胎児の管理も充実しています。 母親学級・両親学級・さくらんぼ学級(多胎妊娠)などを開設し、様々なニーズにもお応えしています。分娩時のご家族の立会いや無痛分娩、LDRでの分娩も行っております。(一定の条件があります)。 産後は希望に応じて、母児同室または異室制が選択できます。

出生前診断

現在15週-18週の時期に希望する妊婦に対してのみ、クアトロマーカー検査を実施しています。羊水検査・絨毛検査は胎児の染色体異常の可能性が高くかつ検査を希望する妊婦に対して実施しています。また、超音波による胎児スクリーニング検査も行っています。その他の胎児異常が疑われる場合には必要に応じてカウンセリングを実施しております。

前期破水の治療

妊娠中期の破水の妊婦に対しては子宮頚管縫縮術にフィブリン糊を用いる方法を行っており、妊娠持続期間は従来の方法に比べてはるかに延長し、児に対しても良好な結果が得られています。

高年妊婦管理

不妊、不育症治療後、また社会的状況などによる高年妊婦が多く、NICUとの連携も密な母児管理を行っています。