お知らせ

  • 1乳腺腫瘍に対する造影剤を用いた超音波検査
  • 乳腺腫瘤に対する造影剤を用いた超音波検査は2012年8月に保険適用されました。この承認については当院の乳腺・内分泌外科が先進医療として多施設共同臨床試験に参加しました。造影超音波検査は乳腺腫瘤の血管および血流の状態をリアルタイムに観察できるため、乳腺腫瘤の良、悪性の診断に有用とされております。しかしながらまだ開始されたばかりで、その診断基準は十分に定まっていないのが現状です。引き続き当院では造影超音波検査の結果を実際の手術標本と対比させ、より正確な診断の確立を目指しております。

  • 2トリプルネガティブ乳がんにおける発生、抗がん剤療法に対する抵抗性の研究
  • 乳がんはエストロゲン、プロゲステロンという二つの女性ホルモンに対する受け手(受容体)とヒト上皮増殖因子受容体-2 (HER-2)が乳がん細胞表面にあるかないかにより悪性度を評価することができます。これら3つの受容体をすべて持たないタイプをトリプルネガティブ乳がんと呼び、ホルモン療法や抗がん剤療法などの治療に抵抗性で、かつ悪性度が高いことが報告されています。当院ではトリプルネガティブ乳がんの発生から成長のメカニズム、抗がん剤療法に対する抵抗性の原因究明に関する研究を行っています。

  • 3初期状態における乳がんの研究
  • 非浸潤性乳管がんにおけるホルモン受容体、HER2発現、p53変異、病理学的特徴、予後との関連性を評価し、乳がんの初期における状態の解明に取り組んでいます。

  • 4乳がん患者の術前・術後における精神状態に対する軽度運動実践の効果
  • 手術後の乳がん患者さんにおいて、適応障害や抑うつなど精神的問題を抱える頻度が高いことが当院および他施設における臨床試験より国内外で報告されてきました。それに引き続いてこのような精神状態に対する軽度運動療法の有用性を専門組織(明治安田厚生事業団)とともに評価中です。

  • 5乳がん骨髄微小転移の予後に関する臨床研究
  • 乳がんの骨髄微小転移の有無は乳がん患者の予後因子となることが、さまざまな研究において近年、明らかとなってきています。当科のcell-search systemを用いた臨床研究においても、画像診断で骨転移が認められない症例でもcell-search syst emにより骨髄微小転移が認められた症例では、再発、転移が多いことが明らかとなってきました。現在化学療法、抗ホルモン剤治療により、骨髄微小転移数や予後が改善するかどうかを検討しています。

  • 6甲状腺がんにおけるセンチネルリンパ節生検(SNB)の有効性の評価
  • 甲状腺がんは頸部のリンパ節に転移を起こす可能性があります。現在はすべての症例で頸部のリンパ節を甲状腺とともに摘出しています。しかしながらリンパ節転移がない症例も存在いたします。そこで手術前の超音波検査やCT検査で頸部リンパ節に腫大が認められない時は、放射線同位元素(アイソトープ)と色素を用いて、最初に甲状腺癌が転移を起こす可能性のあるセンチネル (見張り)リンパ節を見つけるようにしております。まだ実験段階ですので、その後通常のリンパ節を摘出しておりますが、将来的には乳がんと同様に転移のない時は残りのリンパ節切除を省けるかもしれません。
    また臨床的に甲状腺濾胞がんは、良性の濾胞腺腫との鑑別が困難な腫瘍です。濾胞がんの診断基準は、甲状腺外への転移巣の存在、あるいは術後の病理所見で腫瘍周囲の被膜への浸潤、あるいは脈管(リンパ管、血管)への浸潤があることとされています。甲状腺外への転移巣の存在の有無を同定するため、甲状腺濾胞がんの可能性がある濾胞性腫瘍に対して手術中センチネルリンパ節生検を実施し、リンパ節の転移の有無によって適切な手術範囲を決定し、良好な結果を得ています。

  • 7副甲状腺腫瘍におけるナビゲーションサージェリーの有用性に関する臨床研究
  • 血中カルシウムが異常に高くなる副甲状腺機能亢進症も手術による腫瘍摘出が必要となりますが、副甲状腺細胞は心筋細胞と同様にミトコンドリアが豊富に存在するため、ミトコンドリアと特異的に反応するMIBIが副甲状腺腫瘍の存在診断に有用である可能性があります。このため当科では手術当日にMIBIシンチグラムを撮影後、手術中にγーカウンターでその腫瘍部位を同定する、いわゆるナビゲーションサージェリーを実施しています。この方法で副甲状腺1腺のみが腫瘍化する原発性副甲状腺機能亢進症では、皮膚の切開は必要最小限の3cm以内としています。

  • 8乳がんに対する凍結療法
  • 凍結治療は生体組織の一部を凍結・壊死させる治療法です。近年話題になっているラジオ波焼灼(RFA:radiofrequency ablation)等とともに、"切らない乳がん治療方法(non-surgical ablation)"の一つです。海外ではすでに臨床応用されていますが、日本では2011年より腎がんに対して保険収載されたものの、乳がんでは未承認です。慈恵医大の附属病院の一つである柏病院では2013年に学内倫理委員会の承認を得、切除を前提とした小径乳がん(≦15mm)に対する凍結療法を行い良好な成績が得られました。この経験を踏まえ、腎癌で培われたノウハウをもとに、Cryo-Hitを用いた、非切除を前提とした小径乳癌に対する保険適応外の凍結治療(自費診療)を当院学内倫理委員会の承認を得て、開始いたしております。
    凍結療法は外科手術に比べ、手技が容易で出血が少なく、穿刺痕の他に術創が残らず、凍結壊死後の組織の再生性から乳房の変形が最小限ですむことが期待されます。また、超音波画像ガイド下にピンポイントに凍結針の留置を行い、凍結中は超音波画像によりリアルタイムにアイスボールの成長過程のモニタリングを行い、最後にアイスボールの大きさを確認するためMRI画像を撮影します。

    凍結治療時アイスボールの湿度分布

    凍結治療時アイスボールの湿度分布

      凍結治療の適応
    • ・臨床的な、湿潤径+管内進展≦15mm
    • ・画像上、遠隔転移が明らかでない
    • ・Luminal A type
    • ・センチネルリンパ節生検で陰性
    • ・文書による同意が得られている
    • ・MRI実施が可能

    凍結治療実施のフローチャート

    凍結治療実施のフローチャート
  • 9乳がんに対する皮膚温存〜乳輪乳頭温存乳房切除+一次再建手術法
  • 当センターでは乳癌手術の約60%が乳房部分切除であり、センチネルリンパ節生検の併用により腋窩郭清を省略する機会も多くなっています。また癌の広がり範囲などにより温存術が適さない場合にも、形成外科との協力下に一次乳房再建術を積極的に取り入れています。その際には、再建術式と患者さんのニーズに合わせ、現在では4タイプ5種類のアプローチ法を使い分けています(図)。自己の乳房皮膚を全て温存するskin sparing mastectomy、乳輪まで温存するareola sparing mastectomy、乳輪乳頭まで温存するnipple sparing mastectomy(図)を行っており、術後の整容性だけでなく、がんの根治性においても良好な成績を収めています。また、2013年夏にシリコンインプラントによる乳房再検が保険収載されたことにより、再建方法のオプションがさらに広がりました。

    一次乳房再建時に用いる皮膚切開法

    一次乳房再建時に用いる皮膚切開法
    skin-sparing mastectomy

    (乳頭再建前)
    skin-sparing mastectomy

    (シリコン製人口乳輪乳頭装着時)skin-sparing mastectomy

    areola-sparing mastectomy

    (シリコンインプラント再建)
    areola-sparing mastectomy

    (腹直筋皮弁再建)areola-sparing mastectomy

    nipple-sparing mastectomy

    nipple-sparing mastectomy

    nipple-sparing mastectomy


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