診療内容

慢性閉塞性肺疾患(COPD)
COPDは肺の生活習慣病といわれており、喫煙を原因として肺胞の破壊と末梢気道の炎症が慢性的に進行する病態です。初期はほとんど無症状ですが、進行すると呼吸不全や全身症状等が出現し日常生活の制限もおこります。早期の診断と禁煙指導、薬物・リハビリによる治療、重症の場合の酸素療法等を行っています。また、冬場の急性増悪に対する予防としてワクチンによる感染症対策を行っています。

■ 気管支喘息
喘息は、慢性的な気管支の炎症により気道の過敏性が亢進し、アレルゲンや大気汚染、感染等により、発作的に喘鳴や咳・痰がでて呼吸が苦しくなる病気です。当科では最新の吸入ステロイド療法を採用し、ピークフローメーター、喘息日誌の指導など等きめ細かく診療を行っています。これにより外来通院患者さんの発作入院は少なく、良好なコントロールが実現されています。


■ 肺癌
当院においても年々患者数は増加しており、年間150例の肺癌症例を診察しております。臨床試験も含めた新しい治療を積極的に取り入れ、疼痛管理などの緩和医療も同時に行い、患者さんが苦痛なく治療を受けられるよう努めております。また、QOL向上のため外来化学療法も行っております。肺癌の他に胸膜中皮腫、胸腺癌、胸腺腫などの腫瘍も治療しております。

■ 睡眠時無呼吸症候群
予想以上に多くの潜在患者さんがいるといわれ、いびきや無呼吸を指摘されたことのある方は要注意です。日中の眠気や集中力の低下などの問題だけでなく、高血圧や動脈硬化などの合併率が高くなることも大きな問題です。当院では精神神経科・耳鼻咽喉科・呼吸器内科の共同で総合的な睡眠診療を行っております。
診断のためには1泊入院して行うポリソムノグラフィという検査が必要です。最も一般的にみられる閉塞型の無呼吸の場合、ある程度以上重症のかたにはCPAPといって鼻に密着するマスクから空気圧をかけて気道を広げる治療が標準的です。CPAP治療装置は保険適応でレンタル可能です。それ以外にマウスピースなども治療の選択肢になる場合があり、歯科や耳鼻咽喉科と連携して治療に当たっています。


■ 胸部異常陰影
近年、健康診断や人間ドック等での胸部異常陰影の検出率は上昇傾向にあります。それに伴い、胸部異常陰影を主訴に当科を紹介受診され、精査を希望される患者さんはあとをたちません。
当院では、一般のCT検査や必要な血液検査については、通常来院当日に施行可能であり、迅速な対応を心がけております。
さらに、組織学的に確定診断を要する症例には気管支鏡検査やCTガイド下肺生検検査を施行し、より正確な診断が可能になっております。
また、診断の付きにくい症例については呼吸器外科との連携のもと、胸腔鏡検査を積極的に取り入れています。健診で胸部異常陰影を指摘されましたら是非ご相談ください。


■ サルコイドーシス
肺を中心として全身に肉芽腫が出来、細菌感染との関連が疑われる原因不明の難病です。診断には胸部CTや気管支鏡などの検査を行います。自然に軽快する事もありますが治療の必要になる場合があり、定期的な経過観察が必要です。


■ 肺線維症、間質性肺炎
肺の間質といわれる部位に起こる特殊な肺炎です。咳や呼吸困難などの症状が急速に進行する急性型と、徐々に進行する慢性型に分けられます。膠原病や吸入物質に対するアレルギー反応が原因となる場合と、それらが明らかでない突発性があります。病状に合わせてステロイドや免疫薬製剤による治療が必要となります。


■ 慢性呼吸不全
慢性閉塞性肺疾患(COPD)や肺線維症の患者さんに対し、在宅酸素療法を導入し、ADL・QOLを維持するよう努めております。急性憎悪症例に対しては、気管内挿管を回避するため、マスク式人工呼吸(非侵襲的陽圧換気療法:NIPPV)を積極的に取り入れ好成績をあげ、在宅人工呼吸導入も行っております。また、理学療法や栄養管理など包括的リハビリテーションも行っております。


■ 急性呼吸不全(急性呼吸促迫症候群:ARDS)
気管内挿管・人工呼吸管理を要する重篤な病態で治療困難とされています。その原因も様々であるため、原因疾患の治療や呼吸管理はもちろん、合併症の予防・治療など、きめ細かな全身管理が必要とされます。当科では集中治療室(ICU)とも連携し治療を行っています。

■ 呼吸器感染症
肺炎は日本人死亡統計で死亡原因の4番目の疾患で、そのほとんどが高齢者です。
現在、病原微生物の中で迅速診断可能なものがあり、早期から病原微生物に適した抗生剤投与が可能になってきております。胸膜炎、膿胸、原病に呼吸器疾患をもっている患者さんの下気道感染症に対しても適切な抗菌剤投与に努めております。

■ 結核・非結核性抗酸菌症
日本は先進国の中で結核患者さんが多く、診断の遅れが接触者への感染拡大として問題となっております。当科では血清補助診断を用いたり必要な患者さんには気管支鏡検査を行い早期迅速診断に努めております。当院は結核病棟を有しておりませんが、慈恵医大第三病院(狛江市)に結核病棟があり、入院が必要な患者さんは連携して治療をおこなっております。
  非結核性抗酸菌症は結核菌以外の抗酸菌感染症の総称であり、最近20年間で6倍以上増加しております。当科では早期診断と、適切な治療選択を行っています。