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内頚動脈狭窄症

頚動脈狭窄症、頚動脈内膜肥厚について

頸動脈狭窄とは、脳に入る主要な血管である頸動脈が、動脈硬化により血管の壁が厚くなる(頚動脈内膜肥厚*1)ことです。これにより、血管のとおりが狭くなり(頚動脈狭窄)、脳に入る血液の流れが滞る状態となります。この狭窄が高度になるにつれて将来的に脳梗塞 (*2)を起こす可能性が高くなります。高度な狭窄のために脳への血流が低下する、または狭窄部分の不安定な血流によって作られた小さな血栓が脳の血管に詰まることなどによって脳梗塞が生じやすくなると考えられます。そのため、頚動脈狭窄と診断された場合には、脳血管障害を専門する脳神経外科の受診をし、今後の治療方法に関して相談することをお勧めします。

治療方法(*3)には頚動脈内膜剥離術(CEA)(*4)と頚動脈ステント留置術(CAS)(*5)などの手術加療が必要な場合と、生活習慣病の治療(*6)で経過観察を行う場合が有ります。まずは専門医の診断を受けていただいて適切な治療方針を決める必要が有ります。慈恵医大では、年間100例以上の新患の頸動脈狭窄症の患者さんに対して、手術加療のみならず頸動脈狭窄のプラーク性状診断に基づいた適切な総合的な治療方針を提示していま

診断

一時的な脳梗塞症状が生じた場合、その原因を調べる過程で必ず頸動脈狭窄を調べる必要があります。検査方法は頸動脈超音波検査、頚動脈MRA、頚動脈造影CT等があります。まずは侵襲性が低いと思われる超音波やMRAで診断される例が多いです。また 最近は脳ドック等で行われる頚動脈超音波検査で頚動脈狭窄もしくは頚動脈内膜肥厚(*1)を指摘される例も増えています

頚動脈内膜肥厚(*1)

超音波検査で診断される例が増えています。全身の動脈硬化の進展の程度を示しているといわれています。超音波検査で頸動脈の血管の膜の厚みを測定します。正常であれば頚動脈の血管の膜の厚みは1.1mmです。動脈硬化が進展することによって厚みを増し、血管の狭窄を生じます。一度肥厚した血管内膜は正常化する事は少ないため、内膜肥厚を指摘された場合には、それ以上進展しないような生活習慣病の管理が大切になります。

頚動脈狭窄の症状(*2)

少しずつ膜の厚みが増していくため、軽度であれば、ほとんど症状を呈することはありません(無症候性)。ただし、頚動脈の超音波検査などを行うと、膜の厚みが増していることが詳細に判断できます。頚動脈の狭窄の状態は、「狭窄度」(どの位せまいか?)によって評価しています。狭窄度が高いと、脳梗塞の症状を出す可能性があります(症候性)。 これらの症状は血液の通りが悪くなる事によって、脳に血液が入りづらくなることと、狭窄している部分に小さな血液の固まり(血栓)が生じて、それが脳の血管に詰まることによって起こると考えられます。

頚動脈狭窄によって起こりうる症状は次のような症状があります。

  • 一過性の脳梗塞症状(一過性脳虚血発作)麻痺、言葉が出ない(失語)、呂律がまわらない等
  • 一時的に突然眼の前が暗くなり改善する(一過性黒内障)

一過性脳虚血発作

脳梗塞には様々な症状があります。主に麻痺、失語です。これは、狭窄している動脈と反対側の手足に、麻痺が生じます。初期には体が傾く、手足の力が入りにくいなどの症状のため気づかないことがあります。特徴として、手足の両方に症状がでる事が特徴です。失語は言葉が出ない状態を指します。これは左の内頸動脈狭窄症の場合に特徴的です。そのほか脳梗塞の症状として手足のしびれ、言葉のもつれ(構音障害)があります。これらが一過性(一時的)に出現することを一過性脳虚血発作と呼びます。

一過性黒内障

飛蚊症とは少し違いますが、一過性脳虚血発作に似た一過性黒内障と言うものにも注意が必要です。一過性黒内障とは、片側の目の視力障害が急速に起こって、普通10分以内で回復するものを言います。視力障害とは、例えば、片側の視野の一部もしくは全部に「急に影が見えるような感じがした」、「急にカーテンを引いたように暗くなった」と言うような訴えがよくみられます。この一過性黒内障は頚動脈に動脈硬化によって起こった挟窄があって、この頚動脈がつまりかけている場合によく起こります。つまり頚動脈の挟窄部に出来た小さな塞栓(小さな血液の塊)がはがれて、目の網膜へ行く動脈の方に時々流れて行って、その血管の血液の流れが一時的に途絶えて起こると考えられています。

手術方法について(*3)

頚動脈を切開して血管の中の動脈硬化の部分を剥離してくる「頚動脈内膜剥離術(CEA)」と血管の中から金属の筒を内張りのように留置して、押し広げる「頚動脈ステント留置術(CAS)」の両者があります。

頚部内頸動脈内膜剥離術(CEA) (*4)

全身麻酔で頚部の皮膚を切開して頚動脈を露出します。総頸動脈、外頸動脈、内頸動脈にそれぞれ遮断を行った後に動脈に切開を加えます。その後、動脈硬化部分(プラーク)を削いでいきます。

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頚動脈ステント留置術(CAS)(*5)

局所(部分)麻酔でカテーテルを大腿動脈から頚動脈まで進めます。 動脈硬化のかす(デブリス)がはがれて、脳の血管につまらないように、狭窄部の向こう側に遠位塞栓予防デバイスを一時的に留置します。現在は、一時的に血流を遮断しないよう、フィルター型のものを用いています。狭窄部をわずかに拡張させた後、ステントが入ったカテーテルを誘導し、展開します。その後さらにバルーンでステントを血管の壁に密着させます。最後にフィルターを回収して手技を終了します。 頚動脈狭窄に関しては適切な診断と治療方針が、脳梗塞を予防するためには重要になります。専門的な範囲に関しては直接医師からの説明を聞いて正しい理解をする事が大切です。

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生活習慣病の管理が大切(*6)

喫煙、糖尿病、高血圧、高脂血症、高尿酸血症(痛風)などが原因となり頚動脈狭窄が進行します。頸動脈の膜のなかに、コレステロール、繊維、カルシウム、微小な出血の固まりが少しずつたまり厚みが増して、血管内腔を狭窄していきます。そのため、このような生活習慣病を治療することが頸動脈狭窄の進行を予防する上で一番大切になります。

 


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