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特徴的な治療

術中MRI併用開頭手術

悪性グリオーマの治療

 

悪性グリオーマは成人の悪性脳腫瘍の中で最も頻度の多い疾患です。なかでも神経膠芽腫は平均余命が発症から約1年と極めて予後不良で、脳神経外科領域において最も治療困難な疾患の1つです。その最大の理由は、砂に水がしみこむように脳実質内に腫瘍が浸潤性に発育することが特徴だからです。
慈恵医大柏病院脳神経外科では、手術のみならず放射線治療や化学療法も含め集学的治療を行っておりますが、腫瘍容積を可能な限り縮小しておいた方が術後の化学療法の治療効果がより期待できます。やがて脳内に浸潤した腫瘍細胞は局所再発し、この再発病変が患者の余命を左右することになります。従って悪性グリオーマの治療は、腫瘍摘出手術で腫瘍を最大限に摘出した後に放射線治療と化学療法により局所再発をいかに制御できるかに主眼が置かれています。

以上のことからグリオーマに対する手術は、脳機能を温存しつつ腫瘍を最大限に摘出することが重要であり、そのために様々な手術支援装置が開発されてきました。
   
術中MRIの併用
 

近年、脳腫瘍の開頭手術に術中MRIが使用され、術者が術中に腫瘍の局在、摘出範囲をより正確に把握することが可能となりました。それに付随して腫瘍の場所を蛍光色素で表示することができる5-ALAや、運動機能の局在が術野のどこに存在するかを電気生理学的手法で同定するための術中SEP/MEPなどを駆使し、安全で確実な脳腫瘍手術が行われています。
術中ナビゲーションは有用な手術支援装置でありますが、術前画像を基本にしているため、硬膜切開や脳脊髄液の漏出あるいは、腫瘍切除を進めていくうちに脳の変位が生じるため、ずれが生じることが問題となっています。(これをbrain shiftといいます。)以上のことから、開頭手術中にMRI撮像ができるということは、術中どの程度腫瘍が摘出されているか、どの部位、深さに進入しているのか正確に把握することが可能になります。これは術者にとって安心材料であり、患者さんにとっても安全で確実な手術を提供することになっているのです。

   
慈恵医大柏病院における特徴
 

慈恵医大柏病院では、2007年12月に第1例目の術中MRI併用開頭手術を行って以来、現在まで数十例の術中MRI併用下の開頭手術を行ってきました。日本全国でも手術室内に隣接してMRIが稼働している施設は10余りですが、当施設の特徴としては、ガントリーが広く、MRI内で簡単な手術操作を行うことが可能です。

また救急室の隣に存在する通常のMRI検査室に手術室が併設されており、脳神経外科手術に対応できる広いスペースを所有しております。またMRI対応手術機器を装備し、手術室を改装しました。MRI室内には撮影中の感染防止に留意して空調も整備しました。MRIの最大磁場領域である5ガウスライン内に磁性体金属を持ち込むことを留意して、手術中に頭部を固定するための木製フレームとチタン製のピンおよび患者を手術台からMRI撮影室に移動させるためのMRI対応移動ベッドが(株)日立メディコによって独自に作製されました。呼吸器・モニターなどの生命維持装置が磁場による影響を受けないことや、生命維持装置によりMRI画像に歪みが生じないことは日立メディコ社との共同基礎実験で確認しました。

   
手術の実際
 

手術操作および撮影手順は、手術創部を開いたまま患者を透明な手術用ドレープで覆い、術野を清潔に保ちながら患者を手術台の背盤とともにMRI対応移動用ベッドへスライドさせながら移します。この一連の操作については、脳神経外科医のみならず、麻酔科医、手術部看護師らと入念なシュミレーションを繰り返し行うことにより、安全かつ円滑に行うことができるようになりました。これまでに行われた手術では、感染症を含む合併症は1例もありません。
術中MRIを併用することにより安全で確実な腫瘍摘出術を行うことが容易になりましたが、それでも境界不鮮明なグリオーマは、術野でどの範囲まで広がりを有しているのか、またどのくらいの深さまで切除が可能かといったイメージがつきにくい場合があります。術中に画像所見と術野の所見とを対比させなくてはなりません。
そこでこのピットフォールを克服するために術野にマーカーを置きながらMRIを撮像する方法を考案しました。そのマーカーとは、bone wax(骨鑞)を充填させたシリコンチューブを作成し目標切除範囲の辺縁部に挿入した状態でMRIを撮像する方法です。これを我々はWax Pile Methodと名付けました。
(第10回日本脳神経外科術中画像研究会にて発表 。2010年6月広島)
通常、グリオーマを含む脳腫瘍はT2強調像で高信号(白く光る)を呈することが多いため、低信号を呈する(黒く抜ける)bone wax(骨鑞)とのコントラストの違いにより挿入したチューブの位置や方向が明瞭となります。またチューブを挿入した状態でMRIを術中に撮像するため、画像所見と術中所見が合致するためbrain shiftの影響を考慮する必要がありません。特に境界不明瞭な良性グリオーマ手術においてbone wax(骨鑞)を充填したシリコンチューブを術中マーカーとして用いた術中MRI併用開頭腫瘍摘出手術は、より安全で確実な手術であるといえます。
現在、症例数を重ねつつあります。

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