白内障班

代表 柴琢也

1. 白内障手術適応

超音波乳化吸引術の進歩とともに、急速に白内障手術適応が拡大した。近年、医師および患者が、視力低下やその他の愁訴を安易に白内障が原因と考え、手術に臨むことが多いように思われる。その結果、術後に充分な患者の満足を得られない例が散見される様になってきており、白内障手術適応について再考する必要があると思われる。
そこで我々は、術前にコントラスト感度検査を行ない、視力および白内障混濁のタイプとの関係について検討し、より適切な手術適応について検討している。

2. 白内障術式

現在約3mmの創口からの超音波乳化吸引術が主流である。しかし、我々は灌流系と吸引系を別々に分けることにより、1.5mm以下の創口(サイドポート)から、水晶体を乳化吸引する極小切開白内障手術を考案した。本術式は、単に小さい創口から白内障手術が可能というばかりでなく、従来の超音波乳化吸引装置を使用して行なえることが可能で、新たに高価で特別な器具を購入する必要がないというメリットがある。
また以前は1.5mm以下の創口から水晶体摘出が可能であっても、眼内レンズを挿入するには2.2~3.0mm程度に創口を拡大する必要があった。しかし、これも本教室が世界に先駆けて従来の眼内レンズを2.0mm以下の創口より挿入する方法を開発した。今後も使用器具、および器械の改良をすすめ、より安全で、効率の良い極小切開白内障手術を目指す。

3. 眼内レンズと術後視機能

a. アクリル眼内レンズ

フォールダブル眼内レンズによる小切開白内障手術の増加にともない、高屈折でレンズが薄いとか、後発白内障が少ないということで、シリコーンレンズに比べアクリルレンズの需要が拡大した。そして現在、製法の異なるアクリルレンズが数社より発表されている。

1) グリスニング
アクリルレンズには、術後レンズ内にグリスニング(小さな輝点)が生じるというが知られている。以前われわれは、アクリルレンズに熱を加えることにより、実験的にグリスニングを生じさせることが可能であることを報告した。そこで、各種アクリルレンズ に様々な条件の熱を加え、グリスニング発生の比較検討を行なっている。また、臨床的にも、同一症例の両眼にそれぞれ種類の異なるアクリルレンズを挿入し、グリスニング発生および程度について比較検討している。
2) 後発白内障
アクリルレンズが主流になっても、残念ながら後発白内障はなくならない。一方で、眼内レンズの光学部デザインにより、後発白内障の発生予防効果が期待されている。そこで、われわれは同一症例の両眼にレンズデザインの異なるアクリルレンズをそれぞれ挿入し、術後の後嚢混濁の様子および中心固定等の眼内での安定性について比較検討している。

b. 着色眼内レンズ

以前、われわれは、独自に開発した色合わせ器械を用いて、着色眼内レンズが羞明感および色感覚の変化の予防に有効であることを報告した。しかし、当時PMMAレンズの着色レンズしかなく、フォールダブルレンズによる小切開白内障手術の波に追いやられた感があった。しかし、ようやくフォールダブル着色レンズが登場してきた。最近では、加齢性黄斑変性に対しても着色レンズが有効なのではという報告もあり、現在新しいフォールダブル着色レンズの有用性について検討を行なっている。

4. 多焦点眼内レンズ

白内障患者では、現在は単焦点レンズを使用することが一般的である。しかし、この場合は、調節力が失われるため、遠方視力を重視すると、近方視には近用眼鏡が必要で、近見視力を重視すると、遠方視には遠用眼鏡が必要になる。遠方近方共に裸眼で見ることを目的に開発された眼内レンズが多焦点眼内レンズである。当院ではこの多焦点眼内レンズを用いた白内障手術を行っており、術後視機能の解析を行っている。