緑内障
良好な視機能維持をめざして治療法の選択を行い、日常生活上のアドバイスを行っています。手術は、病態に応じて種々の術式を採用していますが、主としてマイトマイシンCを併用した線維柱帯切除術により従来コントロールが難しかった難治症例に対しても良好な結果を得ています。
緑内障外来
- 外来日:
- 火曜 午後
- 担当医:
- 中野匡、野呂隆彦、伊藤義徳、松田英樹、小池健(非常勤)
緑内障とは?
緑内障は「目の成人病」とか、「目の生活習慣病」などといわれていますが、具体的には視神経(見たものを脳へ送る目の神経)が主に眼圧(眼球内の圧力)が高くなるなどの原因で損傷を受け、徐々に視野が狭くなってくる病気(視野狭窄)です。治療せずにそのまま放置しておくと最悪の場合、失明してしまうこともある危険な病気です。もともと中高年以降の方に多く、日本では糖尿病網膜症とならんで、中途失明の主な原因として問題視されています。大規模な疫学調査(多治見スタディー)によると、我が国における緑内障の有病率は、想像以上に高く、実に中高年以上の約20人に1人がこの病気に罹患していることがわかりました。推定でおよそ400~500万人は緑内障の方がいると考えられ、今後さらに増加傾向にあるのではないかと危惧されています。緑内障は初期の段階で自覚症状がほとんどなく、健康診断や他の理由で眼科を受診して偶然発見される以外は、気づかないまま放置してしまう方がたくさんいます。個人差はありますが、通常視力は最後まで温存されるため、病気が進行しているにもかかわらず、治療を受けていない方が全体の8割におよぶと言われています。自覚した時には不幸にしてかなり進行期の緑内障となり、失明の危機にさらされているという現実があります。
緑内障の症状
緑内障にはいろいろな種類があり、主に次の4つのタイプに分類されます。
- 1. 発達緑内障
- 緑内障は赤ちゃんでも発症します。これは先天性の緑内障で、発達緑内障と言います。赤ちゃんの目はやわらかいので高眼圧によって膨張し、巨大な眼球、特に角膜が異常に大きくなります。一見黒目がちな顔貌になり、別名牛眼と呼ばれています。早晩失明にいたるほど視力障害が強く起こるので、診断がつき次第、速やかに手術が必要となります。このタイプの緑内障は別として、一般的に言われている緑内障は成人の緑内障を意味し、病状によって以下に分けられます。
- 2. 閉塞隅角緑内障または急性緑内障
- 突然に眼と頭が痛くなり、急に見えにくくなる病気です。一般に中年以降の女性(男性の3倍)に多いとされ、目の良い方、遠視の人に起こりやすいと言われています。眼の中を循環する水(房水)の出口がふさがるために起こるもので、眼圧が急激に高くなります。そのまま放置すると見えなくなってしまいます。眼球内部の圧力が急に上昇するため、発作がひどい場合は激しい頭痛・眼痛や吐き気がおこることも多く、脳の病気や胃腸の病気と勘違いされ、最初眼科ではなく、脳外科や内科に受診してしまうこともあるようです。目薬や飲み薬を用い、レーザー手術などで治療できますが、不幸にして眼科受診が遅れて手遅れになることもあり注意が必要です。
- 3. 開放隅角緑内障または慢性緑内障
- はじめのうちはほとんど自覚症状がなく、何年もかかってゆっくりと進行する慢性の緑内障です。眼圧の高さにより原発開放隅角緑内障と正常眼圧緑内障に分けられます。どちらのタイプも 房水の出口(隅角)は開いていますが、原発開放隅角緑内障はその先の排水路(シュレム管など)が詰まってしまい、房水がうまく流れなくなるために、眼圧が高くなります。正常眼圧緑内障は眼圧が正常範囲(15mmHg前後)なのに、視神経が損傷を受けてしまうタイプの緑内障です。眼圧も正常で自覚症状もないために、気づかずに放置される場合が多く、特に注意が必要です。理由はわかりませんが、日本人にはこの正常眼圧緑内障が、もっとも多くみられます。どちらのタイプも視力に影響が出て自分で気づく頃には、視神経が障害され、視野がずいぶん狭くなっていることも多い緑内障です。目薬や飲み薬の治療が基本ですが、どうしても効果が無い場合はレーザー治療や手術が適応となります。
- 4. 続発性緑内障
- 続発緑内障は、一部の目の病気 (ブドウ膜炎)や全身性の病気、一部の薬(ステロイド)、外傷などにより生じる二次的な緑内障をいいます。発症のしかたで、開放隅角緑内障もしくは閉塞隅角緑内障タイプのどちらにもなり、場合によってはその合併であったりします。原因疾患の治療とともに、タイプに即した緑内障治療をしていく事が重要です。
緑内障の検査
- 1. 眼圧検査
- 目に空気や器具をあてて眼球の硬さ(眼圧)を測定します。これにより眼圧がきちんとコントロールされているかがわかります。正常な眼圧のレベルは10~21mmHgぐらいとされています。しかし、眼圧が正常な範囲内であるにもかかわらず、視神経に障害がおきるタイプの緑内障(正常眼圧緑内障)もあり、この検査だけでは十分でありません。
- 2. 眼底検査
- 検眼鏡によって直接眼底を観察したり、眼底写真による検査を行います。緑内障が疑われた場合、特に視神経乳頭と呼ばれる、視神経が集合している場所を注意して観察します。視神経が損傷している際に観察される「視神経乳頭陥凹の拡大」と呼ばれる所見は緑内障の診断の際によく指摘されます。当院では緑内障専門医による検眼検査に加え、肉眼では確認できないレベルの神経および神経線維の障害をGDx、OCTといった最新の画像診断装置を活用して診断します。
- 3. 視野検査
- 視野が正常であるか、狭くなっていないかを検査します。光の点を点滅させたり、動かしたりして見える部分と見えない部分を調べます。当院ではゴールドスタンダードと言えるハンフリーフィールドアナライザーやゴールドマン視野計に加え、通常これらの検査で診断が困難な早期の視野異常を検出可能なFDTスクリーナーやハンフリーMatrix、SITA-SWAPなどの新しい検査法を導入し早期緑内障の発見に努めています。
- 4. 隅角検査
- 目に粘性のある目薬をつけて特殊なコンタクトレンズによる隅角鏡検査をおこない、眼から外に流れ出る房水の出口を直接観察します。さらに通常検査で診断に苦慮するタイプではUBMやペンタカムなどの最新機器を併用して緑内障のタイプを判定します。
- 5. その他
- 緑内障(特に正常眼圧緑内障)は、診断がむずかしく、視野異常を生じる他の病気がないかを調べるため、上記に挙げた検査以外にCT検査やMRI検査などを行うこともあります。また外来時間帯以外に眼圧が上昇している可能性がある場合には、検査入院していただき、24時間の眼圧日内変動を測定する場合もあります。
緑内障の治療
緑内障の治療の原則は、他に明らかな原因がある続発性緑内障などを除き、まず眼圧を下げることが基本です。これには3つの方法があります。まずは薬物治療を試み、効果が得られない場合はレーザー治療、手術治療を試みます。患者さんによっては薬物アレルギーなどが原因で、初めから手術を選択しなければならないこともあります。
- 1. 薬物治療
- 緑内障の点眼薬は作用機序が異なる沢山の種類がありますが、基本的には眼球内に入る水(房水)の量を減らすか、眼球外へ排出しやすくするかのどちらかに属します。実際の治療では、まずは一剤から開始し、眼圧の下降効果が不十分だったり、副作用の有無により、薬を変更したり作用機序の違った薬を追加します。
- 2. レーザー治療
- 基本的に手術と同じ考えなのですが、レーザー治療により水(房水)を眼球外に流れやすくする事をめざします。手術治療に比べ眼に対するストレスが少なく、ほとんどが外来で通院しながらできるので、患者さんにとっては非常に楽な治療法といえます。また排出口だけではなく、水(房水)を作っている組織に直接照射し、眼内に入る水の量を減らすといった方法もあります。中にはレーザー治療によって、今まで何種類も使用していた点眼薬が不要になったという例もありますが、長期に観察すると次第に眼圧が再上昇することも少なくありません。このため、薬物療法が無効な場合、レーザー治療を経ない場合も多く、手術治療にとってかわる万能なものではありません。レーザー治療がもっとも有効なのは、前述した急性発作を起こしやすい緑内障(閉塞隅角緑内障)です。このタイプの緑内障は、眼球の解剖学的な構造上、虹彩自体が水の排出を障害しています。この場合は虹彩にレーザーで孔を開けることで、緑内障の急性発作を治療します。また発作を起こす可能性がある危険な目に予防的処置をすることもあります。
- 3. 手術治療
- 当院では通常の線維柱帯切除術の他に、症例によって非穿孔性線維柱帯切除術、線維柱帯切開術、隅角癒着解離術などの術式を選択しています。また白内障手術との同時手術を行う場合もあります。どの術式も薬物療法やレーザー治療では下がらなかった眼圧を手術により何とかコントロールしようという考えです。基本的には詰まった排出口を再利用するか、新しい別の排水口を作るかのどちらかです。一般的に手術というと悪いできものをとり除き、できる限り健全な状態に戻すことを想像しますが、緑内障の場合、一度悪くなった視野は残念ながら元に戻りません。また通常の手術では、切った部分をしっかり糸で縫い、傷口が完全に閉じることをめざしますが、緑内障手術では、せっかく作った排出口がふさがらないように工夫をします。当院で行われる線維柱帯切除術は、術中に傷口がふさがり難くする薬(マイトマイシンC)を標準的に併用し、長期にわたり良好な手術成績を得ています。
緑内障は早期発見、早期治療が重要
緑内障は自覚症状に乏しく、一度狭くなった視野は戻りません。しかし病気の進行は大変ゆっくりで、進行を抑制する有効な治療法もあります。そのため早期発見、早期治療が大変有効な病気といえます。自覚症状がなくとも40歳を過ぎたら、年に1回は眼科検診を受けることをお勧めします。

東京慈恵会医科大学 眼科学教室