当院では認知症の診断及び治療を行う際に、以下の4診療科が主として対応を行っています。ここでは当該3診療科が扱う認知症患者さんの特徴及び治療方法について説明いたします。
精神科ではうつ病、不安障害・ストレス障害、統合失調症、不眠症、てんかんなどとともに認知症を診てきた歴史があります。
当科では2005年に専門外来として「もの忘れ外来」を開設し、認知症の診断・治療を行って参りました。そこではもの忘れを気にして来院される方が多いのですが、なかにはうつ病やせん妄の方もいらっしゃいます。そのような疾患との鑑別や各種認知症の診断のために、医師による診察以外にも臨床心理士による認知記銘力の評価や、CTやMRIやアイソトープ検査を用いた画像検査、脳波検査などを必要に応じて行って参ります。
治療においては、抗認知症薬だけでなくBPSDと言われる認知症の周辺症状に対し、必要に応じて薬物の調整を行っております。
認知症には身体症状も認めるものもあり、また身体合併症がある患者さんもいらっしゃいます。その際には総合病院の強みをいかし脳神経内科や脳神経外科をはじめ身体診療科とも連携を取りながら診断・治療を行っております。
治療方針がたち状態が落ち着かれた方には近所にかかりつけ医の先生に、通院が大変になった方は訪問診療の先生への御紹介も積極的に行っております。
センター長/精神神経科診療部長 矢野勝治
認知症は多様な原因で引き起こされる症候群であり、原因疾患を特定することが重要です。認知症患者の症状は、中核症状である記憶障害以外に様々な症状が認められます。脳神経内科で扱うものとしては、歩行や動作などの運動症状を併発する神経変性疾患や脳血管障害などがあります。まれにビタミン欠乏や甲状腺機能低下などの内科疾患に伴うものもあります。神経変性疾患として代表的なものはパーキンソン病です。手のふるえや動きが緩慢、歩きがぎこちなく、転倒しやすいなどの症状があります。レビー小体型認知症もパーキンソン症状を認めます。パーキンソン病以外にも多くの疾病が歩行障害などの運動症状を認めます。認知症といわれてもこのような症状が加わっていないかよく観察して、その疑いがあれば脳神経内科の診察が必要です。治療は認知機能障害に対する薬剤に加えて運動症状改善への対策を行います。パーキンソン病であればドパミン製剤などの投与を行います。患者さんの日常生活動作や生活の質の向上を念頭にいれ、認知機能だけでなく運動機能の改善を行うことが重要です。
脳神経内科診療部長 仙石錬平
認知機能の低下はアルツハイマー型認知症などの脳の変性に伴う病気の他に、感染症や内分泌疾患など脳以外の身体の異常から生じることがあります。認知機能低下は原因により治療が異なるため、原因を特定することは非常に重要となります。総合診療部では一般的な認知症に加え、その他の身体疾患による認知機能の低下に対しても、必要に応じて専門診療科と連携をとりながら診断及び治療を行います。また認知症患者さんはご高齢な方が多いことから身体疾患も患っている方も多くいらっしゃいます。そのような患者さんの身体疾患についても、認知症をお持ちの中でどのような医療が適切であるかを話し合いながら検討していきます。さらに認知症患者さんの生活状況や介護されるご家族の状況などを確認しながら介護保険制度の利用なども含めて検討を行い、患者さんご本人、ご家族ともに安心してより良い時間を過ごせるように包括的全人的医療を提供いたします。
総合診療部診療部長 泉祐介
認知症の原因で最も多いのはアルツハイマー型認知症ですが、それ以外にも数多くの原因が存在します。根本的治療が難しいものが多い中で、適切な診断と治療により治る認知症も存在します。その中には、慢性硬膜下血腫、正常圧水頭症、脳腫瘍など、外科手術により治るものも存在します。脳神経外科では、外科治療により治せる認知症を適切に診断し、確実に治療していきます。
脳神経外科診療部長 加藤直樹