教授 景山 茂教授写真
客員教授 植田 真一郎
講座(研究部)の概要
歴史や簡単な紹介
 当研究室は1995年7月に発足した。研究室の名称を臨床薬理学ではなく薬物治療学とした。わが国では臨床薬理学というと新薬開発のための臨床試験、すなわち治験を中心に扱う分野であるという認識が一部にある。当研究室では、治験に特に重点を置くのではなく、薬物治療学が中心となるアカデミアにおける臨床薬理学を実践することが主旨である。そこでこの名称を発足時より採用した。
医学科教育について
 卒前教育においては、病態生理と診断が中心とならざるを得ない。しかし、卒後教育システムが完備していないため、最低限の薬物療法の教育は必要である。4年次の薬物治療学では、新薬開発、有害事象、副作用、薬害、また、薬の使い方として、薬物代謝、薬物相互作用、薬物投与計画を教えている。学生が医薬品の添付文書を読めるようになることを目標としている。
大学院教育・研究について
 薬の効く人・効かない人、副作用のでる人・でない人の研究は、医療の個別化 (personalized medicine) に必須であり、現在はprecision medicineの名の下に注目されている21世紀の医学の最重要テーマの一つである。薬物代謝酵素を中心とする薬剤反応性遺伝子の研究を離島住民を対象に行った。
 インスリン抵抗性と高血圧との関係は私たちの長年の研究テーマである。従来は降圧薬のインスリン抵抗性に対する影響という、surrogate marker について検討してきた。降圧薬のtrue endpoint である心血管イベントに対する効果を、カルシウム拮抗薬といずれの系統の降圧薬との併用が望ましいかを検討する大規模臨床試験のパイロットスタディを行った。これは、personalized medicineとは対極をなす平均値の医学であるevidence-based medicineの実践にevidenceを提供する研究である。また、スタチンの筋・肝・腎に対する副作用を検討するために大規模なケース・コホート研究を多施設共同研究として行った。当時は電子化されていないデータを基にデータの取得を行ったが、この種の研究は医療システムのIT化の進歩と共に、現在、データベース研究として注目されている領域である。
 臨床研究の他、レギュラトリーサイエンスの研究として、GCP の運用と治験の倫理的・科学的な質の向上に関する検討を行い、わが国の治験レベルが向上するよう政策提言してきた。現在、臨床研究の基盤整備の一環として疾患レジストリーの構築を行っている。
講座(研究室)からのメッセージ
 適正な薬物療法を行うには適正な薬効と安全性の評価が不可欠である。薬の効果については、臨床薬理学会、高血圧学会、糖尿病学会において、安全性については薬剤疫学会を中心に活動を行っている。
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教育担当
講義科目名称と対象学年

薬物治療学(4年)

実習科目名称と対象学年

自然と生命の理演習(2年)

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大学院担当科目名称

成育・運動機能病態・治療学:臨床薬理学

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主な研究テーマ
実験研究
薬剤反応性遺伝子
至適併用降圧療法に関する研究
降圧薬のインスリン感受性におよぼす影響
レギュラトリーサイエンスに関する研究
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主な業績
[総説]
1. 景山 茂.医師主導臨床試験の目的と信頼性確保のあり方.医薬ジャーナル 2015; 51(1): 51-5.

2. 景山 茂.医師から見たRMPとその意義.医薬ジャーナル 2013; 49(11): 91(2589)-94(2592).

3. 植田真一郎,景山茂.臨床試験,観察研究におけるデータストレージシステムの活用.薬剤疫学 2013; 18(1): 31-4.

[原著論文]
1. Odawara M (Tokyo Medical Univ), Kawamori R (Juntendo Univ Grad Sch Med), Tajima N, Iwamoto Y (Asahi Life Foundation), Kageyama S, Yodo Y1, Ueki F1 (1: Sumitomo Dainippon Pharma), Hotta N (Chubu Rosai Hosp). Long-term treatment study of global standard dose metformin in Japanese patients with type 2 diabetes mellitus. Diabetol Int 2017. ; 8: 286-95. DOI: 10.1007/s13340-017-0309-z.

2. Kawamori R, Kaku K, Hanafusa T, Ioriya K, Kageyama S, Hotta N. Clinical study of repaglinide efficacy and safety in type 2 diabetes mellitus patients with blood glucose levels inadequately controlled by sitagliptin. J Diabetes Investig 2016; 7: 253-259.

3. Kadokura T, Akiyama N, Kashiwagi, Utsuno A, Kazuta K, Yoshida S, Nagase I, Smulders R (Astellas Pharma Global Development Europe, Leiden, The Netherlands ), Kageyama S. Pharmacokinetic and pharmacodynamic study of ipragliflozin in Japanese patients with type 2 diabetes mellitus: a randomized, double-blind, placebo-controlled study. Diabetes Res Clin Pract. 2014; 106(1):50-6.

4. Ooba N, Sato T , Wakana A, Orii T, Kitamura M, Kokan A, Kurata H , Shimodozono Y , Matsui K, Yoshida H, Yamaguchi T, Kageyama S, Kubota K. A prospective stratified case-cohort study on statins and multiple adverse events in Japan. PLoS One 2014; 9(5): e96919.

5. Kawamori R, Kaku K, Hanafusa T, Oikawa T, Kageyama S, Hotta N. Effect of combination therapy with repaglinide and metformin hydrochloride on glycemic control in Japanese patients with type 2 diabetes mellitus. J Diabetes Investig 2014; 5(1): 72-9.

6. Kurihara C, Kusuoka H, Ono S, Kakee N, Saito K, Takehara K, Tsujide K, Nabeoka Y, Sakuhiro T, Aoki H, Morishita N, Suzuki C, Kachi S, Kondo E, Komori Y, Isobe T, Kageyama S, Watanabe H. High rate of awarding compensation for claims of injuries related to clinical trials by pharmaceutical companies in Japan: a questionnaire survey. PLoS One 2014; 9(1): e84998.

7. Yokoyama K, Nakashima A, Urashima M, Suga H, Mimura T, Kimura Y, Kanazawa Y, YokotaT, Sakamoto M, Ishizawa S, Nishimura R, Kurata H, Tanno Y, Tojo K, Kageyama S, Ohkido I, Utsunomiya K, Hosoya T. Interactions between serum vitamin D levels and vitamin D receptor gene FokI polymorphisms for renal function in patients with type 2 diabetes. PLoS One 2012; 7(12) : e51171.

8. Kawamori R, Kaku K, Hanafusa T, Kashiwabara D, Kageyama S, Hotta N. Efficacy and safety of repaglinide vs nateglinide for treatment of Japanese patients with type 2 diabetes mellitus. J Diabet Invest 2012; 3: 302-8.

9. Kadokura T, Saito M, Utsuno A, Kazuta K, Yoshida S, Kawasaki S, Nagase I, Kageyama S. Ipragliflozin (ASP1941), a selective sodium-dependent glucose cotransporter 2 inhibitor, safely stimulates urinary glucose excretion without inducing hypoglycemia in healthy Japanese subjects. Diabetol Int 2011: 2: 172-182.

10. Kageyama S, Ueda S, Mochizuki K, Miyakawa M, Sugawara M, Nakayama M, Ohashi Y, Saito I and Saruta T, for the OCEAN Study Group. Optimal Combination of Effective ANtihypertensives (OCEAN) study: a prospective, randomized, open-label, blinded endpoint trial?rationale, design and results of a pilot study in Japan. Hypertension Research 2012; 35: 221-7.

11. Saito I, Suzuki H, Kageyama S, Saruta T. Treatment of hypertension in patients 85 years of age or older: a J-BRAVE substudy. Clin Exp Hypertens 2011; 33: 275-80.
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主な競争的研究費
○厚生労働科学研究費補助金(医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究事業)
「GCPの運用と治験の倫理的・科学的な質の向上に関する研究」
○厚生労働科学研究費補助金(医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究事業)
「信頼性調査のあるべき方向性に関する研究について」
○厚生労働科学研究費補助金(医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究事業)
「治験審査委員会のあるべき方向性に関する研究について」
○厚生労働科学研究費補助金(医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究事業)
「国際共同治験を前提としたGCP等の治験制度及びその運用のあり方に関する研究」
○厚生労働科学研究費補助金(医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究事業)
「治験に係る健康被害発生時の被験者保護に関する研究」
○厚生労働科学研究費補助金(医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究事業)
「医師主導治験の運用に関する研究」
○厚生労働科学研究費補助金(医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究事業)
「医師主導治験等の運用に関する研究」
○私立大学戦略的研究基盤形成支援事業
「DNAマイクロアレイシステムを基盤としたエピゲノム臨床研究と分子標的薬リード創出」
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その他
文部科学省 革新的医療技術創出拠点プロジェクト合同推進委員会委員
厚生労働省 「臨床研究・治験活性化に関する検討会」構成員
日本医療研究開発機構 革新的医療技術創出拠点プロジェクト プログラムオフィサー
日本医療研究開発機構 AMED課題評価委員会委員
日本私立医科大学協会 治験・臨床研究推進委員会委員
全国医学部長病院長会議 利益相反検討委員会委員
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