大木 隆生(外科学講座教授)研修管理委員からのメッセージ


東京慈恵会医科大学
外科学講座 統括責任者
研修管理委員会 委員
大木 隆生

HP: www.jikeisurgery.jp

医学生、臨床研修医の諸君へ


医学生、臨床研修医の皆さんこんにちは、外科学講座統括責任者の大木 隆生です。慈恵医大の研修医・レジデントシステムの紹介として、外科学講座の特長をお伝えしたいと思います。

慈恵医大外科学講座は消化管外科、肝胆膵外科、乳腺・内分泌外科、呼吸器外科、小児外科、血管外科の6診療部から成り、各診療部に担当教授がいます。初代外科教授は学祖高木兼寛で、当講座は開講から131年の間、大学のミッションすなわち「病者の側にたつ医療」、「病気の予防・治療のための実学として医学」、「厳密な医学に裏打ちされた医術と、暖かい心をもった医師の育成」を連綿として受け継いできました。現在、医局員数約250名を擁する大組織で、東京都港区愛宕の本院に約60名、柏病院、第三病院、青戸病院の3つの分院に計70名が勤務し、さらに関東にある約25の関連病院に120名の外科医を派遣しています。バラバラになりかねない大組織を統括し、人事を含めた組織運営が有機的かつ有効に行えるようにするのが統括責任者の仕事です。また外科レジデントの教育レベル・待遇・満足度が保たれているか否かをチェックするのも大事な仕事です。さて、外科学講座の目標の第一は医局員の総幸福度の最大化です。そしてこの目標が達成されれば自然と第二の目標である「良質な医療を提供する事」と「良い医療人を輩出する事」は達成できると確信しています。総幸福度アップのために「トキメキと安らぎのある村社会」を理念とし、「医局員300人、教授院長輩出30名構想」を目標としています。医局員が多い事を善とする理由は、その方が医局員一人当たりの雑用や義務的業務が減り、各人の自由時間が増えるからです。その時間の使い道は各自の自由ですので、好みや人生観に照らして研究開発、臨床・手術、後進育成、アルバイト等にあててもらえれば総幸福度アップにつながると言う理屈です。また、「トキメキ」には、1)患者の命を救う事、2)研究、先進医療開発、3)後進の育成、4)医局員同士の切磋琢磨・昇格人事、などに伴うものが含まれます。「安らぎ」も人生にとって大事な要素ですので、終身雇用を原則としていますし、より多くの医局員の将来の安住の地となる関連病院や院長・部長ポストを確保すると同時に開業や他施設への転身の際には外科学講座で出来うる限りの支援をします。「村社会」の所以は、慈恵医大外科学講座が資本主義や競争原理を基本とし、飽くなき利潤や効率性を追求する米国型の組織(ゲゼルシャフト)を反面教師とし、お互いを慮り、喜び、悲しみを分かち合うカルチャーを有し、能力のある者・生産性の高い者が成果を一人占めせず弱者を助けるという友愛をベースとしたゲマインシャフト型組織を目指しているからです。

さて、当科におけるレジデントシステムには幾つかの特徴がありますがその第一は当科でレジデントを修了した者は、慈恵医大並びに関連病院への就職がほぼ約束されているという点です。この特徴は、レジデント修了後のポジションが保障されていない市中病院と比べ、特に際立っていると思います。だからレジデントを開始した日から諸君を生涯に渡る外科学講座の仲間と認識しています。また、他学の卒業生であっても、当科でレジデントを修了した者の最終学歴は慈恵医大卒とみなし、分け隔てなく仲間として受け入れています。

第2の特徴としてレジデントが充実した日々をおくれている事、きちんとトレーニングを受けられる事、そして卒後5年目のレジデント修了時に外科専門医を受験するために必要な症例数を経験出来ている事等を当科の重要課題に挙げていることです。そして、この目的を達成するために、レジデント委員会を組織し、統括責任者とレジデント委員会の代表者が年に2度、全てのレジデントと個別に面談します。その際に、レジデントが経験した手術数や内容をチェックすることは言うまでもありませんが、個々のレジデントが充実した日々を送っているか否かも聴取します。もし、レジデントに相応の手術の機会が与えられていないことや、不満があった場合には、統括責任者がすぐにその改善に向けて行動します。このように、全てのレジデントが充実したトレーニングを受けられるよう、特段の配慮をしています。

レジデント修練施設の中には、その施設では経験が積めないために、他科あるいは他施設へ出張し、不足している手術を補わなければならないという施設もありますが、本学では、全ての診療部が網羅されていますので、その必要はありません。また、将来の診療科の選択に関しては、冒頭で述べました6診療部の中から自分に一番適した診療科をレジデント修了時(卒後6年目)に自由に選べますが、その選択肢の多さと本人の意思を尊重している点が我々のレジデントシステムの第3の特徴です。

最後の特徴は待遇に関するものです。レジデントに限らず医局員の待遇は各病院ごとの事情がありますので統一する事は難しいですが、「貧乏クジ」が極力ないようにするために、新たにレジデントを派遣する場合は統括責任者が諸君の代理人として病院側と交渉し、最高の待遇と給与が得られるように交渉しています。

外科レジデントをどこで修了するかにより諸君の最終学歴と将来の職場が決まりますので、慎重に選んでもらいたいと願っています。医局や講座によりその運営理念は様々で、万人向けの正しい理念は存在しないと思いますが、より多くの“ハートと志しのある若者”が慈恵医大外科学講座の理念に共鳴し、慈恵医大でトレーニングを受けてくれる事を願っています。そして我々は、諸君が10年後、20年後にも「トキメキと安らぎのある村社会」の仲間入りをして良かった、と思ってもらえるための努力を続けます。


百聞は一見にしかず、まずはご自身の関心のある診療科へ見学に来てください。待っています。