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青戸病院医療事故報告



産婦人科医療事故詳細(抜粋)
1. 事故名 「他院における流産手術後の急性腹炎で搬送されてきた患者様が、消化管穿孔性腹膜炎に起因すると思われる多臓器不全で死亡した事故」
   
2. 病院名、所在地、院長名
  東京慈恵会医科大学附属病院
  東京都港区西新橋3丁目19番18号
  院長 森山 寛(平成16年4月1日就任)
   
3. 患者様
  東京都在住、38歳、女性
   
4. 事故発生日
  平成15年12月
   
5. 関与した主な医療従事者
  ○○クリニック A医師(昭和57年当大学卒、産婦人科専門医)
      B医師(昭和60年当大学卒、産婦人科専門医)
  当院産婦人科 C医師(平成5年当大学卒、産婦人科専門医)
      D医師(昭和63年当大学卒、産婦人科専門医)
   
6. 発生経過
   患者様は、平成15年12月10日に○○クリニックにおいて体外受精後妊娠8週5日の子宮内胎 児死亡にて流産手術を受けた(術者:A医師、途中からB医師に変更、麻酔管理:B医師)。手術 直後より強い下腹部痛があり、超音波検査で腹腔内出血を認めたため、子宮穿孔、子宮内外同時妊娠などを疑い当院に緊急搬送となった。10時20分搬送依頼、11時50分ごろ当院到着。当院C医師はA医師からの申し送りを受け、診察所見から緊急手術の適応と判断した。当初開腹術の予定であったが、患者様ご本人、ご主人(医師)の同意の下、D医師およびC医師の執刀にてまず腹腔鏡により腹腔内を検索することとした。腹腔鏡下で子宮穿孔部を止血し縫合処置を受け、開腹術の必要なしとの見解で、手術を終了した。12月12日14時30分ごろまでは患者様は意識清明で、普通に会話をされていた。その後、腹膜炎症状が強まり、16時30分消化管穿孔性腹膜炎の疑いで緊急開腹手術を施行した。腸液性の腹水大量、トライツ靭帯より150cm付近に2ヶ所母指頭大の穿孔部を認め、小腸部分切除、吻合、腹腔洗浄ドレナージを施行した。麻酔管理中より、血圧の低下が持続し敗血症性ショックと診断しICUに収容しPMX(エンドトキシン吸着)を施行した。
12月13日未明、突然の循環機能障害、心停止が発生し、ICUにおいて診療科を越えた懸命の治療を続けた結果、一時的には回復を認めた。しかしその後再度全身状態が悪化し、多臓器不全で平成16年1月1日に死亡された。
   
7. 事故後の病院としての対応
  1) ご家族への対応: 病院長(北原院長:当時)をはじめ産婦人科、外科の診療部長及び担当医よ り、謝罪と原因究明のための対応を協議するためにご遺族と数回の話し合いの機会をもった。
  2) 事実調査について: 原因究明のために下記の委員会を設置した。尚、外部委員会にはご遺族側 の推薦委員にも参加していただいた。
    事故調査委員会設置(平成16年1月28日より4回開催)
    外部調査委員会設置(平成16年3月1日より3回開催)
  3) 外部調査委員会報告書(平成16年4月30日付)の構成
    論点 1: 流産手術に関連する事項
    論点 2: 流産手術直後の経過に関する事項
    論点 3: 腹腔鏡手術の選択に当たっての情報伝達に関連する事項
    論点 4: 腹腔鏡手術の選択に関する事項
    論点 5: 腹腔鏡手術時の状況判断と処置に関する事項
    論点 6: 疼痛管理に関する事項
    論点 7: 急性腹症に対する対応に関する事項
    総括  : 多くの医師が関与して診療が行なわれた本件では、特に正確な情報伝達が重要となるが、幾つかの局面で正しい伝達がなされていない。診療情報の適切な伝達、それを受けて行なわれるべき医療行為の指示系統の不備、混乱が有効な初期治療の施行を妨げた大きな要因と言える。
   
8. 事故発生防止策
 









前医から流産手術の際に子宮穿孔の可能性が少ないとの情報であったが、事実は子宮穿孔だけではなく腸穿孔もあったものと思われる。手術にあたってはあらゆる可能性を想定して臨み、術中の観察も慎重に行なったが、結果としては腸穿孔を見落とした可能性がある。再手術後は症状の一時回復を認めたが、不幸な結果となった。今回の事故の要因として考えられる点は、医師間の患者様に関する情報の伝達が適切でなかったこと、また情報の共有化が不足していたこと、また診療を担当した医師の病態把握が不十分であったことが挙げられる。腹腔鏡手術等の選択と処置においても、この点が関与していたと考えられる。担当診療部には十分な指導徹底を行なうと共に、病院全体としても今回の事故を教訓に診療部全体に注意を行なった。また、腹腔鏡手術の修練・認定制度、手術に関する客観的な管理システム(手術安全管理規定)の整備をおこなった。
診療部全体には臨時診療部長会議を開催し、外部調査委員会報告を基に事故の全容説明と再発防止策を提示し周知徹底した。
   
9. 事故報告、届け出先
 

平成16年1月1日:医師法第21条に従い所轄警察署に届け出を行なった。
平成16年1月5日:東京都医療安全課及び厚生労働省関東信越厚生局へ報告を行なった。
   
10. ご遺族へのプライバシー保護について
  この公表については、ご遺族の了解の下で行なっておりますが、当院といたしましてはご遺族へのプライバシーが適正に守られることをお願いいたします。
   
11. 本件の問合せ窓口
  本院:広報担当 TEL 03―5400−1269(直通)
             
 

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