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研究によって病に苦しむ人を救う
東京慈恵会医科大学 学長
医学研究科長
松藤 千弥
東京慈恵会医科大学の源流を辿ると、1881年(明治14年)に設立された「成医会」という医学団体に行き着きます。成医会の目的は「専ラ医風ヲ改良シテ学術ヲ講究スルニ在リ」とされ、病気を患者から切り離して学問の対象にするような当時の医風を変えたいという思いとともに、研究を通して病に苦しむ人を救おうとする強い意志が込められています。成医会のリーダーは、英国セントトーマス医学校で医学を学び帰国したばかりの高木兼寛。彼は成医会に続いて、教育機関である「成医会講習所」、教育病院と施療病院を兼ねた「有志共立東京病院」、日本最初の看護師養成機関「看護婦教育所」を立ち上げ、現在につながる最古の私立医科大学の原型を作ったのです。
高木兼寛が英国で医学を学ぼうとしたのは、当時の日本で猛威をふるっていた脚気を撲滅したいと考えたからでした。そのために彼は、最新の英国医学とともに、疫学・公衆衛生学の考え方や、病気を人から切り離さない英国医学の伝統を力いっぱい学びました。帰国後、成医会設立などの活動をしながら、当時不明であった脚気の原因について研究し、疫学的手法で栄養の欠陥が脚気の原因であり、食事の改善によって脚気を予防できるという仮説に到達しました。海軍練習艦の遠洋航海を使って行われたこの仮説の立証は、最初の大規模比較介入試験と言われています。その後の脚気予防によって、多くの人命が救われたのは言うまでもありません。
このように本学は、その始まりから今まで、研究を通して病に苦しむ人を救うことを大切な使命としてきました。1956年(昭和31年)、私立大学として初の大学院医学研究科を設置。以来大学院は、医学に関する理論及び応用を教授研究し、その深奥を極めることによる文化の進展への寄与、また専攻分野の研究指導者の養成の中心的役割を担ってきました。
医学・医療は着実に進歩しています。しかし解決しなければならない医学的問題は尽きることがありません。生物ゲノムの解読と遺伝子工学技術の進歩を中心とした生命科学の発展が私たちにもたらした最大の恩恵は、ヒトを真の生物学の対象にしたということです。医学的問題の大部分はヒトの生物学上の問題であり、今や私たちはそこに科学的、論理的に切り込む武器を手にしたといえるでしょう。従来は経験や偶然に頼っていた医学的問題の解決を、論理的に「狙って」できるようになったのです。山中伸弥教授によるiPS細胞の作製はヒトの生物学の進歩がもたらした最大の成果ですが、これ自体が医学的問題の論理的解決を大きく加速するでしょう。むしろ、医学・医療の急速な進歩に社会的な合意が追いつくのか、心配になります。
私は今こそ、私たちが医学研究を通じて医学・医療の進歩に貢献できる好機だと感じています。そのためには若い皆さんの力が必要です。本学大学院で、自立して研究活動を行うための高度な研究能力を身に付け、さらに医学研究指導者としての教育力、社会的・倫理的な配慮、豊かな学識を養っていただきたいと思います。そのために、実践的な共通カリキュラム、多様な選択カリキュラムが用意されています。ティーチング アシスタント(TA)、リサーチ アシスタント(RA)、研究助成、海外派遣助成、大学院優秀論文賞なども充実していますし、働きながら大学院で学びたい方は社会人入学制度を検討されるといいでしょう。国立がん研究センターとの連携大学院も始動しています。
情熱を持って学び、私たちの共通の目的である「病に苦しむ人を救う」ことに研究を通して貢献できる大学院生を歓迎します。
学長 松藤 千弥