外来診療

成人先天性心疾患外来

当外来は以下のような患者さんを対象とする専門外来です。

  1. 小児期に心臓の手術を受けられ、その後通院治療中に成人期に達した方
  2. 成人になってから先天性心疾患の手術を受けられた方
  3. 成人になってから先天性心疾患と診断され、手術が必要と言われた方

心臓の病気は生まれつきであっても、成人期になるとその治療方法が変わっていく場合があります。日常生活においての注意点や薬の種類や量、検査の方法などは、患者さんの生活環境や家庭、仕事に応じて検討していくことも少なくありません。また成人病の併発や治療法の選択、さらに女性の方であれば妊娠・出産や婦人科疾患などに対しても適切に対応していくことが大変重要になってきます。

当外来では、心臓外科だけではなく各内科や外科、婦人科などのさまざまな専門診療科と密接な連携をとり、成人期以降の患者さんに対しても心臓を中心としたより適切な全身管理を行っていくよう心掛けています。

そして実際に外科治療を進めていく場合、成人先天性心疾患の手術にあたっては、通常小児の患者さんの治療に必要な先天性の心臓病に関する知識と経験に加えて、年令・体格では大人となるため成人手術についての技術や手術器具が必要になります。さらに手術時には後天性の心疾患である狭心症や弁膜症、大動脈瘤などを合併して場合もあり、適切な外科治療を行うためには小児心臓チームと成人心臓チームの協力が欠かせません。その点でも当科では同じ心臓外科内の成人心臓チームと常に連絡をとりあいながら、より安全・適切な治療方針のもと患者さんの治療にあたっています。

特にこの10年では、開心術の安全性が向上してきたことにより、高齢の患者さんの先天性心疾患に対しても積極的に手術が行われるようになってきています。また手術成績が安定してきたことにより小児期に手術を受けられた患者さんが成人後に再手術適応となる件数も年々増加傾向にあると考えられています。 実際に当科においても、“うまれつきの心臓病をお持ちの大人の患者さん”に対して手術をさせていただく機会は年を負うごとに増えてきており、さらにうまれつきの病気を治すだけではなく、冠動脈バイパス手術や弁膜症手術、不整脈手術など、いわゆる成人病とされる病変に対する心臓手術を同時に行うこともけっしてめずらしいことではなくなってきています。

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さらに当外来では、手術を受けられたあとの患者さんを長く診させていただくにあたって、以下の点について特に力をいれています。

1)ファロー四徴症をはじめとする右室流出路再建術後の患者さんにおいて、これまで超音波検査やカテーテル検査では正確に評価することが難しかった弁逆流や右心室機能に関して、造影MRI検査を導入することによりさらに詳細な定量的評価を行っています。そしてそれらすべての検査結果を総合的に検討したうえで、それぞれの患者さんにとってより適切な治療方針を決定するように心がけています。

2)今日でも様々な治療方針が採られる修正大血管転換症ですが、多くの患者さんたちの経過をより長期にわたり診させていただくことにより、特に三尖弁機能(人工弁を含めて)と体循環を支える右心室の機能に重点をおいた検査・治療を進めていき、さらにその経験をすべての患者さんの治療に生かしていくようにしています。