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青戸病院医療事故報告


「事故の再発防止に向けた改善策の提言」24項目に対する改善状況
                                      (平成17年2月現在)

(1)手術の準備段階
  1. 提言1−1
    難度の高い手術を計画する場合は、実験的医療として倫理委員会に症例を限って申請し、手術チームの準備状況を詳細に説明したうえで承認を得るべきである。
    【改善状況】
      1) 審査体制の整備
     

 

平成16年4月1日付で関連規程を制定・改訂し、本学で実施される高度先進医療や臨床研究が確実に倫理委員会の承認を受けるためのチェック体制を整備しました。これによって、高度先進医療や臨床研究の計画は、倫理委員会と、病院長が管轄する審査委員会[高度先進医療審査委員会(本院に集約し設置)、高度先進医療委員会(各病院に設置)または臨床研究(保険適用外診療を含む)審査委員会]の二段階の審査を受けることになりました。これらの審査委員会は、月1回の定例開催となっており、申請や承認状況に関する情報を共有し、さらに管理課(各機関の事務主管部署)とも連携することによりチェックを行っています。具体的には、倫理委員会の審査結果は管理課に直接報告され、病院の審査委員会の審査結果や病院での手続き状況は申請者から倫理委員会に報告する体制となっています。特に難度の高い手術や高度先進医療技術等と判定された手術は、専用の伝票(特殊手術症例手術麻酔連絡票)を用い、承認された条件および安全管理体制に沿って行われていることを、術前、術中、術後にわたって確認しております。一方、申請や手続きのわかりにくさがあったことから、倫理委員会の申請書式を一部変更するとともに、病院の審査委員会の審査結果を直接倫理委員会に報告する体制を検討しております。(審査体制フローチャート添付)
      2)倫理委員会における審査
        倫理委員会では、高度先進医療を含む難度の高い手術に相当する臨床研究の申請があった場合には、ヘルシンキ宣言に基づく倫理性、科学性とともに実施体制を詳細に審査し、かつ病院の審査委員会への申請と、医療チーム以外のメンバーから構成される効果安全判定委員会の設置を必要条件とすることにしています。難度の高い手術を新たに実施する場合には、症例を限って具体的な実施計画を示すだけでなく、学外の専門家を含む効果安全判定委員会の設置や、手術経験者の手術への参加を求めています。このようなケースとしては、前回の改善状況報告でふれた生体肝移植に加え、前立腺がんの内視鏡手術が含まれます。
      3)病院の審査委員会における審査
        病院長が管轄する高度先進医療審査委員会(本院に集約し設置)、高度先進医療委員会(各病院に設置)および臨床研究(保険適用外診療を含む)審査委員会は、実施グループの知識・技能判定をはじめとして、病院内の具体的な実施、指導、監督体制や費用負担の問題など実施の適否について、より実地に即した審査を行うとともに、管理課と連携して実施状況をきめ細かく把握し、中止や継続の審査を行います。特筆すべきことは、高度先進医療は二つの審査委員会での審査・承認を受ける体制となりました。また、病院の臨床研究審査委員会には、倫理委員会の委員も一部加わっており、両者の連携をはかっています。さらに、病院の審査委員会は、申請者からの実施状況の報告を受け、必要に応じて倫理委員会に再度倫理性、科学性の検討を求めることになっております。
  2. 提言1−2
    倫理委員会で承認を得た手術でも、メンバーが変わるなど申請時と状況が変わる場合は、変更事項につき再度倫理委員会の承認を得るべきである。
    【改善状況】
      難度の高い手術における実施メンバーや、臨床研究における倫理委員会の承認を得たプロトコールの重要な変更は、倫理委員会および病院の審査委員会に変更申請を行うことを周知徹底し、承認を受けるまでは実施できないことになっております。変更申請が適切に実施されたことは、実施報告書の提出(次項)を義務づけることによりチェックしております。特に手術に関しては、前述の特殊手術症例手術麻酔連絡票を用いて、承認を受けた条件に従って行われたことを管理課が常にチェックする体制をとっております。
  3. 提言1−3
    倫理委員会は、承認した手術でも、研究代表者に年に一度など定期的に結果を報告させ、必要に応じて計画の再検討を求めるべきである。
    【改善状況】
     

平成16年4月1日付で整備した関連規程により、本学で実施される高度先進医療技術や臨床研究については、申請者が病院側での審査結果、および承認後1〜2ヵ月後までの病院での手続き状況を倫理委員会に報告することになっております。また、申請者は高度先進医療技術や臨床研究の実施状況、特に有害事象の発生の有無に関する報告書を、毎月および研究終了時に管理課へ提出する義務があります。この際、効果安全評価委員会が設置された研究では、評価委員会の意見を踏まえた実施状況の報告が必要となります。病院の審査委員会では、必要に応じて倫理委員会に再度倫理性、科学性の検討を依頼することになっております。
 また、倫理委員会および病院によって承認される高度先進医療技術や臨床研究等の実施期間は2年を限度としており、それを越えて継続する場合は継続申請が必要です。研究期間の延長手続きをする際に、これまでの実施件数・有害事象の有無を記載することを必須とし、再評価、判断項目といたします。さらに倫理委員会では、承認したすべての医学研究をフォローアップし、継続申請ないし終了報告が行われていることを定期的にチェックいたします。

  4. 提言1−4
    倫理委員会は、医の倫理に基づいた諸手続きが遵守されるよう対策を立てるべきである。
    【改善状況】
      1) 倫理委員会と病院の審査委員会の連携のもとに、より安全な高度先進医療や臨床研究が行われるための審査体制や手続き方法について、フローチャートを作成し、数回にわたり学内各部署に周知徹底いたしました。また、イントラネット上に「臨床研究に関する倫理指針」をはじめとする倫理ガイドラインとともに、倫理委員会ならびに臨床研究(保険適用外診療を含む)審査委員会の申請書式を掲載し、申請者が必要に応じてダウンロードできるようにいたしました。さらにこれまでの3項目の提言への対応として述べましたように、諸手続が適切に行われていることをチェックする体制を整えております。
      2) 倫理委員会では、従前より主として学内の医学研究者を対象とした医学研究倫理セミナーを開催してきましたが、平成16年7月6日には「ヒトを対象とした医学研究者の倫理的責務」をテーマとして、臨床研究や病院におけるヒトゲノム・遺伝子解析研究の計画立案、倫理委員会への申請に関する手続き方法とその問題点について、シンポジウム形式で討論いたしました。今後も医学研究者を対象とした医学研究倫理セミナーを定期的に開催いたします。
      3) 附属4病院では、リスクマネジメント委員会を中心として、医療安全に関する教職員ひとりひとりの意識を高めるため、リスクマネジメントシンポジウムを開催してきました。倫理委員会では、医の倫理を全学的に啓発するため、1年に少なくとも1回以上のリスクマネジメントシンポジウムを共同開催することとし、その初回を平成17年3月14日「本学における医の倫理に基づく医療のあり方」をテーマに計画しております。
      4) 大学としての取り組みとして、全教職員、医学生、看護学生を対象とした「医の倫理と安全管理に関するワークショップ」を平成15年12月以降、毎月継続しております。これは、講義と10名前後の小グループによる討論・発表形式で、医療の安全と倫理に関して職種を超えて話し合い、具体的な改善案を提言することを目標とするワークショップで、参加者の医療安全・倫理意識を高めるために大きな効果をあげております。
      5) 学生に対する倫理教育としては、医学科5年次において「臨床実習」の一環として上記の「医の倫理と安全管理に関するワークショップ」に参加させています。その他、カリキュラム全体として医の倫理に関する授業項目を増やし、医学科3年次の「医学総論」の一部と4年次および6年次の「社会医学」の一部を倫理委員が担当し、将来の医学研究を担う者の意識を高めております。看護学科では、新カリキュラムの中で3年次に「生命倫理学」を履修する予定となっております。
  5. 提言1−5
    術前カンファランスを充実させ、その内容を診療録等に記録すべきである。
    【改善状況】
      1)

関係診療部(科)及び関係部署による術前カンファランスの実施を推進し、その内容を診療録に記録するよう、診療部会議で周知徹底しております。全身麻酔症例を対象とした術前カンファランスでは、主に診断・治療方法、術式・術者、並びに手術同意書の内容の妥当性等について検討いたします。

      2) 術前カンファランスの実施状況については、「手術麻酔申込用紙」を改訂し、診療録に添付することを準備しております。
      3)

医療安全管理の強化、各医療現場の安全に対する現状把握と指導を目的として、医療安全管理室及びチーフリスクマネージャーが月1回、定期的な「医療安全管理院内ラウンド」を実施しております。その際のチェック項目の一つとして診療録、看護日誌の記載状況を評価することになっております。
*医療安全管理院内ラウンド開始日
  第三病院:平成16年1月、青戸病院:平成16年6月、
  附属病院(本院):平成16年9月、柏病院:平成16年11月

      4)

診療録の記載状況については毎月、リスクマネジメント委員会又は診療情報委員会(医療情報委員会)が点検し、その結果を診療部会議に報告しております。
*診療録の記載状況点検開始日:
  青戸病院:平成12年10月、柏病院:平成13年7月、
  附属病院(本院):平成16年1月、第三病院:平成16年4月

  6. 提言1−6
   

新しい医療上の試みは、全学的カンファランスにおいて検討すべきである。

    【改善状況】
      1)

全学的カンファランスの対象医療は、高度先進医療並びに当該施設で初めて行われる医療技術とします。

      2) 新しい医療上の試みを青戸病院、第三病院、柏病院で実施する場合は、診療部単位で附属病院(本院)が申請及び実施状況を把握することになっております。
      3) 例えば、附属病院(本院)において生体肝移植を計画しておりますが、本学では新しい医療であり、先ず倫理委員会の承認を得た上で、病院内に肝移植委員会・肝移植専門小委員会(外部委員を含む)、肝移植連絡協議会を設立し、病院全体で体制整備(チーム医療の組織化、教育スケジュールなど)を確立し、倫理委員会及び各委員会の実施承認を得た上で合同カンファランスやシミュレーションを経て、肝移植手術を行うこととしております。このように、特定の科だけで行うことはなく、病院全体で関連する診療部(科)及び各部署との協議・連携を図り、患者様の安全を第一に考え実施することにしております。
  7. 提言1−7
    術者と麻酔担当医との連携を深めるため、術前に術者と麻酔担当医で手術について協議する機会を設けるべきである。
    【改善状況】
      1) 附属4病院では、新たに「特殊手術症例手術麻酔連絡票」を作成し、高度先進医療技術、保険適用外手術、その他の特殊手術の場合は、手術施行2週間前に提出することを義務付けました。また、手術内容に応じた術者の経験年数及び症例数等を事前に把握することを目的として、「手術麻酔申込用紙」の改定(平成16年6月)を行い、手術日の麻酔科医、担当看護師を決めております。
      2) なお、「特殊手術症例手術麻酔連絡票」と「手術麻酔申込用紙」で、判断できない場合は、事前に術者と麻酔担当医が協議することになっております。
      3) 附属4病院では、平成16年6月より、特殊手術に限って「術前麻酔カンファレンス」を開催し、術者、麻酔担当医、手術部長が協議しております。
  8. 提言1−8
    麻酔経験の少ない研修医が実質的に多くの手術を担当しているという青戸病院の実態は改善されるべきである。麻酔科医が実質的に責任を持てる範囲に手術件数を削減することは改善策の一つではあるが、必要とされる多くの手術ができなくなるという問題が新たに生ずる。このような麻酔体制の問題は日本全体の問題でもある。日本の麻酔体制を充実させる施策を早期に国が講ずべきである。
    【改善状況】
      1) 医療事故発生当時の青戸病院では、麻酔指導医2名、研修医2名でありましたが、麻酔指導医2名、麻酔担当医2名、研修医2〜3名の計6〜7名体制に改めました。
      2) 附属病院(本院)では、研修医の教育体制をより安全・強化する目的として、研修医指導体制は、麻酔指導医1名に対して研修医2名(本学の他科の研修医指導制度では指導医1名に対して5名)となっております。また、第三病院では、麻酔指導医2名、麻酔担当医2名、研修医2〜3名であり、柏病院は、麻酔指導医2名、麻酔担当医3名、研修医2〜3名となっております。
 

 

手術の準備段階手術チームの決定・教育・研修腹腔鏡手術の実施
止血が長引いた場合の救命措置緊急時の院内支援体制の整備
説明と同意の手続き事故後の危機管理体制の整備




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