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医療安全の推進に向けて

医療事故はあってはならないことですが、残念ながら事の大小は別にして全くゼロにできていないのが実情です。これまで「事故は起こるもの」という前提のもと、多くの医療システムを改善してきましたが、それだけでは不充分な事もはっきりしてきています。実は、医療事故原因の大部分にチームワーク不備によるコミュニケーションエラーが関係しています。最近ではこのコミュニケーションエラーを少なくするため、組織のチームワークを向上して確実なチーム医療を行う必要性が認識されつつあります。つまり、患者さんを頂点にして多くの職種の医療従事者がお互いを尊敬し、ベストパフォーマンスを行うことで医療安全文化の醸成を目指していくことが必要とされています。

チームステップス:Team STEPPS (Team Strategies and Tools to Enhance Performance and Patient Safety:医療のパフォーマンスと患者安全を高めるためにチームで取り組む戦略と方法)は、良好なチームワークを確立し、医療行為全般のパフォーマンス(医療行為の経過から結果までの全過程の行い方)と患者さんの安全性を高めるために、米国において国防総省や航空業界などの事故対策実績を元に作成されたチーム戦略です。わが国ではあまりなじみがありませんが、明らかな有用性が確認され、現在では世界標準の患者安全推進ツールとなっているチームワーク改善手法を示しています。  

医療安全対策のステップアップを目指して、当院でもこのTeam STEPPSを実践し、良好なチームワークを意識しながら、病院職員が一丸となり医療安全文化の醸成を目指すこととしました。

なお、Team STEPPSでいう「チーム」の頂点には患者さんが位置しています。つまり、患者さんも医療チームの一員あるいは医療パートナーとして、積極的に発言、指摘することで医療安全の向上にご協力いただく必要があります。

Team STEPPSとは

Team STEPPSは、様々な職種で構成される患者さんのケアチームが、 1.リーダーシップ 2.状況モニタリング 3.相互支援 4.コミュニケーションという4つの主要技能を体得・実践することで、メンタルモデルの共有(コミュニケーションを通して医療行為に関する認識,理解,知識などがチームメンバー間で共有されていること)をはかり、チームとして安全で有益な知識・考え方、態度、成果が得られる戦略で、米国防総省や航空業界などの事故対策実績を元に作成、実践された世界標準の行動規範を示しています。

1. リーダーシップ

チーム活動を理解し、変化する情報をチームメンバーと共有し、必要な人的・物的資源を確実に供給することによりチームメンバーの活動を調整する能力で、適切な労務管理を行うとともに、定期的あるいは不定期の打ち合わせを積極的に行うことで意識の統一をはかります。

2. 状況モニタリング

チームとして協働するために、周囲や自己の状況を積極的に解析・評価し、それを周囲と共有することで、エラーの発生を防止する方法を示します。状況評価に関する個人差をなくすため、評価項目を定めて継続して評価することを推奨しています。

3. 相互支援

責任感や労働負荷などを正確に評価することで、他のチームメンバーの要求や状況を把握し、労働や知識を支援する能力を示します。情報や状況の不認識による誤った判断があった場合には、必ず繰り返してそれらを呈示、指摘する「2回チャレンジルール」、不安なことは不安であると躊躇せず表現する「CUS(カス)」などがあります。職種、経験年数に関係なく、患者さんの安全第一に思ったことは何でも言える、聞ける雰囲気をつくる事により、安全性を飛躍的に高めます。

4. コミュニケーション

コミュニケーションエラーが関係した医療事故は全体の2/3以上を占めるとされています。Team STEPPSでは様々な形式で行われるチームメンバー間の情報伝達を、誤りなく順序立てて、確実に行うプロセスとして、(1)Situation-Background- Assessment-Recommendation (SBAR:エスバー):状況が正確に伝わるよう、状況、背景、評価、提案という順番で連絡を取る方法、(2)コールアウト:重大事態に際してより緊急性の伝わる状況の伝え方、(3)チェックバック:正確な情報伝達のため情報の発信、受領、再確認を決まりとして行うこと、(4)ハンドオフ:申し送り項目を共通化することでエラーの発生を防止する方法、等があります。

まとめ

医療安全に終わりはありません。冒頭にも述べましたが、患者さんを医療チームの一員に迎え、医療従事者がチームを意識して同じ方向を向いて医療行為を行うことが必須と考えます。「目は口ほどにものを言う」あるいは「沈黙は金」という諺が美徳とされる控えめな日本人が関わる医療現場では、誰もが自由に発言できる環境というのは、多少受け入れがたいものかもしれません。しかし当院では、Team STEPPSを導入・推進し、患者さんの安全を第一に考え、職種や年代の垣根を越え、良好なチームワークに根付いた最も安全な大学病院を目指して一丸となって取り組んで参ります。ご理解とご協力のほどお願いいたします。

教育研修 1)エッセンシャルコース開催  通算21回開催(平成23年度3月現在)
1411名参加

2008年より看護部で取り組み始めた
Team STEPPSのコミュニケーションツール「SBAR」

医療安全推進室メンバーが 2010年9月アメリカのワシントンDCのプロビデンス病院でTeam STEPPSトレーナーの資格を取得しました。

医療安全推進室メンバーが 2010年9月アメリカのワシントンDCのプロビデンス病院でTeam STEPPSトレーナーの資格を取得しました。

2010年11月 Team STEPPS エッセンシャルコースの開催

Team STEPPS 推進活動

2012年3月 Team STEPPS 報告会