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乳腺・内分泌外科(疾患解説)


乳腺内分泌外科では乳腺原発の線維腺腫などの良性腫瘍から、がんに代表される悪性腫瘍まで、主として腫瘍性病変を広く取り扱っています。
甲状腺・副甲状腺は耳鼻咽喉科との境界領域であり、これまで人員の関係で、よほどの理由がない限り、基本的には耳鼻科でお願いしてきた経緯があります。


乳がんとは?


乳腺原発の悪性腫瘍は悪性葉状腫瘍、悪性リンパ腫、肉腫など種々存在しますが、99%は癌腫(乳がん)です。たとえば胃がんが胃壁を構成する腺上皮から発生するように、乳がんは基底膜という構造で覆われた乳管という細い管を構成する乳管上皮から発生します。




浸潤がんと非浸潤がん


乳がんは、乳管の壁を構成する乳管上皮細胞の一つがなんらかのきっかけで、がん化することから始まります。がん細胞は細胞分裂を繰り返し、その数をとめどなく増やしていくことで成長していきます。そしてある時期を過ぎると(基底膜を破って外に出る)、がんのがんたる所以である、他臓器への転移を惹起する能力を獲得します。これ以後を浸潤がん、それ以前を非浸潤がんと呼んでいます。時々、浸潤がんは全て転移を起こし死に至るものと誤解している人がありますが、乳がんの70%は治癒が期待できるのです。




検診(自己検診)の大切なわけ


最近はマンモグラフィー検診の普及により、非浸潤がんの段階で見つかることも増えてはきましたが、乳がん患者の80〜90%は浸潤がんです。乳がんに限らず、がんは早い時期に見つかるほどその予後は良いとされています。日本人乳がんの場合、病期気10年生存率は約90%ですが、病期犬両豺腓鰐25%と大きな差があります。検診(自己検診を含む)により早期発見が叫ばれる所以です。
誤解している人は多いのですが、自覚症状(たとえば、しこり)がある人は検診を受けるべきではありません。早めに病院(できれば専門医のいる)を受診すべきです。検診は診断の場ではなく、症状の現れる前の早期がんを篩にかける場所なのです。また自己検診は毎月一度、変化のないことを確認する作業です。何か探そうと瀕回にやる人がたまにいますがあまり有効とはいえません。また生理の周期で触り方は変わるので比較のために周期をあわせることは最重要ポイントです。


乳がんの治療(手術)


標準手術=しこりに対するアプローチ+リンパ節に対するアプローチ


  • しこりに対して:
    部分切除(温存術)? 乳房切除? 乳房切除+乳房再建?
  • リンパ節に対して:
    郭清?非郭清(センチネルリンパ節生検)?

当科では、現在温存術が半数を占めますが、乳房切除が必要な場合にも、特に形成外科との協力で一期的乳房再建に力を入れています。ただ単に乳房切除を行い再建するだけでなく、切除の仕方にも工夫を凝らしています。自己の乳房皮膚を極力残し、乳輪あるいは乳頭切開と腋窩切開のみの皮切で、乳房切除とリンパ節へのアプローチを行う、skin sparing mastectomyの数は徐々に増えており、すでに100例を超え、乳房切除術の3分の1に対し一期的再建を行っています。これは千葉県内では最多の件数です。がんの根治性だけでなく美容上の整容性においても良好な結果を得ており、患者サイドの評価もおかげさまで上々です。


皮膚温存乳腺切除術(Skin sparing mastectomy)のアプローチ




切らない乳がんの治療方法(小径乳がんに対する凍結治療)


凍結治療とは
生体組織の一部を凍結・壊死させる治療法です。近年話題になっているラジオ波焼灼(RFA: radiofrequency ablation)等とともに、“切らない乳がん治療方法(non surgical ablation)”の一つです。
凍結治療とセンチネルリンパ節生検との組み合わせが実現した場合、腋窩のわずかな術創と乳房の小さな穿刺痕のみで治療が終了します。究極の“切らずに済ませる乳癌治療”が現実となり,増加する乳がん患者さんにとっての大いなる福音となることが期待されます。 当院では、学内倫理委員会の承認を得、2013年に切除を前提とした、小径乳がんに対する凍結療法を行い良好な成績が得られました。
今回その経験を踏まえ、学内倫理委員会の承認を得、非切除を前提とした小径乳癌に対する保険適応外の凍結治療(自費診療)を開始いたしました。


歴史的には
19世紀中ごろに氷塊をいれた塩水を用いて実施された報告があります。
その後、 1961年に液体窒素を用いた冷凍手術器が開発されて大きく進展し始めましたが、技術的に凍結範囲の正確な同定ができなかったため、治療自体が不完全とならざるを得ず、下火になりました。
1990年代になり、MRIにより正確な凍結範囲の同定が可能となり、またジュールトムソン効果を応用した凍結治療機器が開発されたことで飛躍的な進展を遂げ、現在に至っています。


凍結治療は
外科手術に比べ、手技が容易で出血が少なく,穿刺痕の他に術創が残らず、凍結壊死後の組織の再生性から乳房の変形が最小限ですむことが期待されます。
また、超音波ガイド下にピンポイントに凍結針の留置を行い、凍結中はMRI画像によりリアルタイムに黒色の球状に見えるアイスボールの成長過程をモニタリングするため、他の方法に比べ安全且つ確実に実施が可能です。


凍結方法として
現在われわれが用いるのは、 わが国で唯一薬事承認が得られている、Galil Medical社製の冷凍手術器(CryoHit)で、これは常温の高圧気体をジュールトムソン効果で低温にする方法です。この際には17G(径1.47mm)の凍結針を用います。超音波ガイド下に穿刺を行い、凍結中はMRIで凍結範囲のモニターを行います。


非切除凍結治療の適応

  • 臨床的な、浸潤径+管内進展≦15
  • 画像上、遠隔転移が明らかでない
  • Luminal A type like
  • センチネルリンパ節生検で陰性
  • 文書による同意が得られている
  • MRI実施が可能
  • 費用概算(一泊二日):約110万円(消費税別)

非切除・凍結治療フローチャート

文責:  東京慈恵会医科大学附属柏病院 外科(乳腺内分泌) 木下智樹

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