■ 附属病院TOPページ

慈恵大学病院だより すこやかインフォメーション 〜大切なご家族のために〜

掲載記事 : No.3 Winter 2005

特集
 血管内治療のご案内
  シリーズ企画 慈恵と恩恵
  医療安全週間の実施について
  健康コラム
 「かぜ」とインフルエンザ

医療安全週間の実施について

血管内治療のご紹介
外科手術のほとんどは手や器具が入るための大きな穴を開け、直接眼で見ながら行うことが普通で、体に負担をかけるものでした。しかし、最近は器具や技術の発達により、患者さまの負担を出来るだけ減らそうそる手術が盛んに行われ、低侵襲治療として新聞などでも多く報道されています。その低侵襲治療のひとつに鏡やレンズなどの光学的な器具を用いた、内視鏡は腹腔鏡による治療があります。それに対して、光学的に見ることが出来ない、または見る為には大きな負担となる臓器内や血管内の治療はどう行うのでしょうか。それには工学的な機器の代わりに画像診断で用いられる機器、例えば超音波(エコー)、X線、X線CT、MRIなどを用い、それらの装置に写った画像を見ながら治療する方法が血管内治療です。血管は管ですから、一部が太くなり破れそうになったり、細くなったり、詰まったり、異物が入ったりする場合があります。これらの状態に対して血管の中から治療をしていきます。その手法はさまざまですが、詰める(塞栓術)、広げる(血管形成術)、留置する(ステント、フィルター留置術)、抜去する(異物除去術)、注入する(動注)などに分けられます。その時に使用する機器や器具の発達に伴い技術が進歩し、現在もまだ発展しつづけています。
画像診断部 診療部長 福田国彦
top
画像診断部 診療部長 福田国彦
脳血管内治療部における血管内治療
 脳血管内治療(あるいは手術)とは鼠頸部の動脈より超極細のカテーテル(管)を頭の中の血管まで挿入し、レントゲン透視下に血管内部から脳血管障害(脳卒中)やある種の脳腫瘍、脊椎疾患を治療する新しい治療法です。従来の開頭法による手術では治療困難であったさまざまな疾患が、この新しい方法によって治療可能となってきました。慈恵医大脳血管内治療センターでは脳卒中を中心に最先端の治療技術、医療機器を用いて診療に当たっています。当院を訪れる患者さまで特に多いのはくも膜下出血の原因となる脳長脈流と診断された方で、破れる前に脳ドックなどで発見された未破裂脳動脈瘤の患者さまは診療開始後2年間で300例以上です。治療方針の決定には、動脈瘤の形状、大きさ、家族暦などさまざまな要素を十分に検討し、慎重に決定するよう心がけております。
 また、治療は検査室で行うのが一般的でしたが、当院ではより安全な手術を行うために、世界でも始めて脳血管内治療と開頭手術どちらにも対応できる最新鋭の脳血管撮影装置を手術室に設置し、治療を行っています。詳しくは脳血管内治療部外来へお問い合わせください。

■脳血管内治療の 対象となる主な疾患

1.出血性疾患
脳動脈瘤(破裂、未破裂)、脳動静脈奇形、硬膜動静脈奇形、脊髄動静脈奇形に対する塞栓術

2.虚血性疾患
超急性期の脳梗塞に対する血管溶解療法、頚動脈及び頭蓋内狭窄症に対する塞栓術

3.その他
脳腫瘍塞栓術 脳腫瘍選択的化学療法など

top
循環器内科における血管内治療
心臓の栄養をつかさどる冠動脈において粥状硬化が破綻し、損傷した血管内膜に血栓が生じ、内腔が閉塞すると心筋梗塞が発症し、閉塞せずに高度な狭窄で止まったものが不安定狭心症と言われ、これらの疾患郡を急性冠症候郡と呼んでいます。その治療としては、第一に血栓削除、第2に狭窄の解除と言う2段階が必要で血栓除去は従来行われている血栓溶解療法にくわえ、最近では血栓吸引療法がmそして狭窄解除目的でバルーンによる拡張療法やステント挿入が行われるようになりました。
  これらを総合して冠動脈インターベンション(PCI)治療といい、その成績は著しく改善されていますが再狭窄が最大の問題です。こそで新しくDrug Eluting Stent(図)すなわち冠動脈ステントに再狭窄を抑制(新生内膜の過剰増殖を抑制)するための薬剤をコーティングしたものが、現在世界的に中心的な治療手段となっています。本邦でも平成16年8月より使用可能となり、更なるPCI適応の拡大が予想され、今後の治療成績が期待されています。

循環器内科診療部長 望月正武
top
画像診断部 貞岡俊一
画像診断部における血管内治療

画像診断部のIVR部門で行われている血管内治療は大きく2つに分けられます。一つは腫瘍の縮小を目的とする治療で、腫瘍の血管を詰めたり(塞栓術)、動脈に薬剤を注入(動注)したりします。そのうち現在最も行われている治療は肝臓癌に対する塞栓術です。1mm以下の血管にもカテーテルという管をいて、腫瘍の存在する領域だけを治療することができるようになりました。その結果、合併症を減らし治療効果を向上させることが出来るようになりました。子宮筋腫などの良性腫瘍にも塞栓療法が行われ、症状の著明な改善が得られています。もうひとつは血管そのものに行う治療です。動脈瘤や静脈瘤の出血予防や出血に対する塞栓術、腎臓や四肢の血管の狭窄や閉塞また透析シャント不全に対する拡張術やステント留置術、エコノミー症候群に対するフィルタ留置術などが行われています。このように心臓、脳血管を除いてほぼ全身に及ぶ疾患に対し全ての診療科から依頼を受け治療を行っております。