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慈恵大学病院だより すこやかインフォメーション 〜大切なご家族のために〜

掲載記事 : No.4 Spring 2005

特集
 がんチーム医療のご案内
  シリーズ企画 慈恵看護婦教育所の設立とその経緯
  お菓子教室始まりました。
  健康コラム
 心のかぜ

がんチーム医療のご案内
がんチーム医療のご紹介

 現在の固形がん(血液がん以外のがん)の治療の主体は、外科療法、放射線療法、薬物療法の3つであり、さらに、より広範な臨床・基礎部門の力をも結集して、統合的・計画的ながん治療(集学的治療と呼ばれます)を行うことを目的として臨床腫瘍部は設立され、現在は腫瘍内科医を中心とした薬物療法、おもにがん化学療法を担当しています。昨今、わが国のがん医療では腫瘍内科医と放射線治療医の不足が問題となっていますが、臨床腫瘍部は当院の各臓器別の腫瘍診療グループに腫瘍内科医として参画し、現在乳がん、食道がん、胃がん、肺がん等のグループに腫瘍内科医が参加して、集学的治療が行なわれています。またがんの治療では、がんそのものに対する抗がん療法と、がんや治療によって起こる症状の緩和を図る緩和医療の両者が不可欠ですので、緩和医療医も臨床腫瘍部のスタッフに含まれています。

臨床腫瘍部 診療副部長 小林直

 さらに固形がんの薬物療法は近年では外来治療が主流ですが、臨床腫瘍部外来に隣接して18ベッドを有する外来点滴治療室が設置され、より安全で快適な薬物治療を目的として臨床腫瘍部とも密接な関係のもとに稼動中です。

前立腺がんに対する小線源療法
 前立腺の腫瘍マーカーであるPSA(前立腺特異抗原)の普及により、早期前立腺癌の患者さんが増えています。PSAが10以下の場合は前立腺内にとどまっていることが多く、根治が期待できます。これまでの治療は前立腺全摘術が中心でしたが、あらたな方法として放射線治療のひとつである小線源療法が注目されています。米国での10年以上の経験では手術と同等の治療効果があるとされています。

 この治療は、専用の針を会陰部から前立腺に穿刺し、その針を通して放射性物質である小線源(ヨウ素125)を70個前後永久に埋め込むというものです。手術時間は1時間半程度です。当院では平成15年秋より国内2番目の施設として本治療を開始し、既に100人以上の患者さんにこの小線源を埋め込みました。手術より肉体的な負担が軽く、短期入院で、勃起機能が保たれ、尿失禁もないなどの利点があります。但し、副作用として一時的な頻尿、尿意切迫感などがあります。泌尿器科と放射線治療部で協力しながら、現在週に3〜5人の患者さんの小線源療法を行っております。
泌尿器科 三木 健太
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造血器腫瘍の治療法

 造血器腫瘍は、白血病、リンパ腫に代表される血液細胞のがん化で引き起こされる病気です。白血病は血液細胞を造る臓器の”骨髄”に、リンパ腫はリンパ節を含む”リンパ系組織”に起こり、身体のいたるところに広がっていきます。白血病は臨床経過の早さによって急性白血病と慢性白血病に分けられ、さらに白血病細胞の種類によって骨髄性白血病とリンパ性白血病に分けられます。これまでホジキン病と非ホジキンリンパ腫に分類されていたリンパ腫は、現在は細胞の起源から、大きくはT(/NK)細胞性と、B細胞性リンパ腫に分けられます。骨髄腫もリンパ系腫瘍の一つです。その治療はがん化した細胞を無くして正常な細胞の回復を助けることを目標として、抗がん剤の併用化学療法、放射線療法、造血幹細胞移植療法等が用いられています。これらの治療では、正常細胞の障害を原因とした、いろいろな副作用が現れるため、看護師、薬剤師、栄養師などあらゆる医療スタッフと良いチームワークをとりながら対応しています。近年では、ある種の白血病細胞(急性前骨髄球性白血病、Ph陽性白血病)やリンパ腫細胞(B細胞リンパ腫)が特徴的に持っている分子を専門にした抗がん剤が開発され、安全で効率的ながん化学療法が可能になってきています。
白血病とは?

血液・腫瘍内科 診療部長 薄井紀子
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小児がんの集学的治療とチーム医療

 小児がんの1/3を占める白血病では化学療法が非常に有効で、現在ではその70%以上が治るようになりました.これは抗ガン剤がよくなったからだけでなく、がんの性質を細かく分析して最適な薬を選んだり,副作用を軽くしたりする方法が発達したこと、さらに、小児科医だけでなく看護師や他の多くのスタッフの知恵を出し合うチーム医療によって的確かつ迅速な対応ができようになったことこそが貢献しているのです.白血病に限らず,脳腫瘍、神経芽種、腎芽種、網膜芽腫などでも、手術や放射線治療に加えて化学療法が大きな役割を果たすことが明らかになってきました.ここでも、小児科の他、小児外科、小児脳外科、放射線科などが綿密に連携し、各専門分野の知識を集めて最も良い治療策を考える集学的治療が要求されます.慈恵医大総合母子健康医療センターでは,これらチーム医療と集学的治療の一環として、治療中・治療後の生活の質の評価も重視し、看護師、保育士、心理士とともに、発達の評価から社会心理学的問題の把握と解決まで、建学の精神に基づく全人医療を追求しています.