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慈恵大学病院だより すこやかインフォメーション 〜大切なご家族のために〜

掲載記事 : No.5 July 2005

特集
 食道と胃の治療のご案内
  スキンケア外来スタート
  新任診療部長紹介
  「すこやか情報館」オープンしました
  健康コラム
 日焼けは肌の大敵

食道と胃の治療のご案内
今回は「食道と胃」のおはなし

消化器・肝臓内科診療医長 鳥居明 「むねやけ」とは前胸部からみぞおちにかけての熱くなるような、つまるような不快な感覚を指します。胃酸や胆汁などが食道内に逆流し、食道粘膜を刺激することによって生じます。内視鏡で食道に炎症や潰瘍を認める場合には「逆流性食道炎」と呼びますが、これらの病変を認めない場合でも胃酸の逆流によって症状が出現する病態を「胃食道逆流症」と呼んでいます。胃と食道の間にある下部食道括約筋の機能が低下し、逆流防止機構が充分に働かない場合にこのような逆流が生じます。日本でも増加傾向にあり、暴飲暴食、高脂肪食、肥満、ストレスなどが誘因になるといわれています。したがって「むねやけ」の治療には生活習慣の改善がきわめて大切といえます。薬物療法としては、強い酸分泌抑制作用を持つプロトンポンプ阻害薬を用います。薬の効果が充分でない場合には腹腔鏡による逆流防止の手術が行われることもあります。
酸逆流のメカニズム
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胃がんの内視鏡治療
貝瀬満

 胃がんは日本人に最も多く見られるがんですが、適切な診断治療によって完治可能です。中でも早期胃がんは外科的または内視鏡的切除によってほぼ完治します。経口的な内視鏡を用いた切除術はがんを含む胃粘膜だけを「剥ぎ取る」ため、身体への負担が少なく、術後の後遺症もほとんどないのが特長です。通常は静脈麻酔で治療し、2〜3cm程度の早期胃がんであれば1時間ほどで切除できます。

 内視鏡治療は日進月歩であり、従来は開腹手術でのみ切除可能であった5cmを越えるような大きな早期胃がんも内視鏡で一括切除して、根治できるようになりました。早期胃がんでは内視鏡的切除術は外科切除と同等の完治率です。

 内視鏡切除の対象となる胃がんは早期のものに限られますので、胃がんをいかに早い時期に発見できるかが「鍵」となります。ヘリコバクター・ピロリ菌が陽性の慢性胃炎では胃がんのリスクがありますので、定期的な内視鏡検査を心がけることが肝要です。

酸逆流のメカニズム
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摂食・嚥下障害と闘う―胃ろうによる栄養管理
消化管外科 鈴木裕

 PEGとは、口から食物が十分に摂れない患者さんのために、胃カメラを使ってお腹の壁と胃の壁を通して小さな穴(この穴のことを胃ろうといいます)を開け、その穴にチューブを入れる手術です。そのチューブを通して栄養を摂取します。

 近年、口から食物が摂れない患者さんが胃ろうで栄養管理を受ける例が急増しています。日本の胃ろうの実施者は推定で毎年20万人を超え、毎年20%増加しています。

 胃ろうが適応されるのは、脳卒中後遺症や神経難病などによる嚥下障害(飲み込みが困難になる障害)ですが、消化器の手術後の栄養管理にも応用できます。また、胃ろうの手術を行うに当っては、手術後もリハビリに励み、安易に胃ろうに頼らず口から食べる努力を続けることが大切です。

 当院は全国で最も多くの手術実績がありますが、「おなかに穴をあける」手術なので、細心の注意を払って行っています。

 また、胃ろうによる栄養管理は長期に及ぶため、術後のケアも重要です。そのためには、患者さんを中心としたチーム医療の実践と地域レベルでの連携が必要です。

  そのため、我々は5年前にPEGドクターズネットワーク(http://www.peg.ne.jp)というNPO法人を立ち上げ、患者家族を孤立させないように、サポート活動を行っています。
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がん薬物療法と薬剤師
菊池 史豊

 進行性食道がんの化学療法においては複数の有効な薬剤を組み合わせた治療法が積極的に取り入れられ、外科的手術や放射線治療と組み合わせることで従来に比べ生存期間の延長や治癒率が著しく向上してきました。さらに近年、化学療法に腎毒性を軽減した製剤アクプラ(r)や体内での薬剤効果を高めた製剤TS-1(r)などが使用されるようになり患者さんにとってとても有意義な治療が行われるようになりました。


 がん化学療法では、一定期間薬剤を飲みつづけなければならず、服用期間中にはある程度副作用が生じます。当院ではチーム医療を積極的に行っており、患者さんの状態を常に把握することに努めております。私たち薬剤師も、患者さんにがん化学療法に使用される薬剤の働きや服用方法だけでなく、服用により起こりえる副作用の初期症状(例えば食欲胃不振や吐き気など)についても説明することを心がけております。また、副作用発現に対して医師、看護婦、栄養士と連携を取りあい患者さんに常に有効かつ安全で効果的ながん化学療法が行われることを支援しております。