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慈恵大学病院だより すこやかインフォメーション 〜大切なご家族のために〜

掲載記事 : No.10 Winter 2007

特集
 脳の健康管理
アルツハイマー病の予防
  脳の休息と栄養
  こどもの脳と神経の病気
  小児における軽度発達障害
  歴史シリーズ 青山墓地
  新任診療部長紹介
  健康コラム
 冬のスキンケア
  より良い医療の提供をめざして

脳の健康管理

アルツハイマー病の予防

脳神経外科 診療部長 阿部俊昭  アルツハイマー病の原因は、ベータアミノロイドという物質が脳に貯まることがそもそもの原因であることがわかってきました。
 ベータアミノロイドという物質は、誰でも年齢を重ねると貯まる物質なので、この物質を貯まらないようにすることが、この病気の予防につながります。
 いわゆる光りものの魚に含まれるDHA、カレーの主成分であるクルクミン、さらに赤ワインが、ベータアミノロイドの貯まりを予防することが証明されています。認知症予防のためには、このような食品を積極的に食べることを心がけてください。さらに社会との交流を保ち、頭をつかって気をつかわずという生活を送ることです。

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脳の休息と栄養

神経内科 診療医長 佐藤浩則  体の疲れは“倦怠感や疲労感”として、感じることができます。“脳の疲れ”はどのように感じるのでしょうか。“脳が疲れた?”と感じるわけではありません。“脳の疲れ”は集中力、思考力や記憶力の低下という形で現れます。では、疲れた体を癒すためにどうされますか? 休息と栄養です。
脳にとっても同じことです。しかし、脳の特殊な点は休息にせよ、栄養にせよ、貯めておくことができないことです。脳は1日120gのブドウ糖を必要とします。そのブドウ糖は肝臓に蓄えられたグリコーゲンから供給されます。しかし、肝臓で作られるグリコーゲンは脳以外の全身にも供給されます。いくら脳が大事でも、栄養を独り占めはできません。しかも、脳はブドウ糖を40秒分しか蓄積できません。
常に血液からブドウ糖が供給されないと脳はすぐに栄養不良に陥ってしまします。1回の食事で肝臓に蓄えられるグリコーゲンは50g程度です。朝食を抜いたり、昼食を抜いたりすれば、脳に十分なグリコーゲンが供給されず、脳は疲れてしまい、正常な働きも十分にできなくなってしまいます。ちょっと考えてみてください、朝寝坊の子供たち、時々朝食抜きで出勤する方々の様子?どうでしょうか。三度三度の食事以外でも、“脳の疲れ”を感じたら、ブドウ糖を含む栄養の補給が効果的です。脳の健康のために規則正しい食生活を心がけてください。
 

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こどもの脳と神経の病気

小児脳神経外科 診療部長 大井静雄  脳は体の司令塔。脳から出る幹線は脊髄で、そこから体のすみずみまで通じている神経にそった電気刺激として、情報は脳から末端へ、末端から脳へ流れます。(資料1)
 赤ちゃんの脳や脊髄の病気は、この体の司令塔が出来上がる課程を侵します。この5年間におよそ1000人の患者さんが全国各地から当診療部を受診されており、水頭症、二分脊椎、脳腫瘍や嚢胞、頭蓋顔面の異常、こどもの脳卒中や頭のけがなどが多く見られます。(資料2)
 私たちの小児脳神経外科診療部は、全国で初めて大学病院の総合医療の中に設立されたもので、最先端の小児総合医療の実践にチーム医療として取り組んでいます。

“ぼくとわたしのすこやかてびき(絵本ガイド)”を母子センターで配布しています。
また、毎年11月23日(祝日)に“こどもの脳のすこやかゼミナール”を開催しています。
資料1資料2

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小児における軽度発達障害

小児科 臨床心理士 斉藤和恵  子どもの発達障害 のうち、注意欠陥/多動性障害、学習障害、高機能自閉性障害、境界域知的障害が軽度発達障害に分類されます。2002年の文部科学省による学童の調査では注意欠陥/多動性障害が2.5%、学習障害が4.5%、高機能自閉性障害が0.8%の頻度で認められ、調査対象の6.3%が軽度発達障害に該当すると報告されています。障害の内容を表-1に示します。乳児健診では、感覚・運動面の発達から1歳6ヶ月健診では言葉や行動の発達から診断されます。1歳6ヶ月を過ぎても言葉が出てこない場合は、精査が必要です。3歳児健診では会話が成立し、抽象概念が育ってきていることが、就学児健診では思考の柔軟性や社会性の存在の有無が診断のポイントとなります。
表-1
病名 主症状
注意欠陥/
多動性障害
(ADHD)
・ひとつのことに集中できない
・じっと座っていられない
・落ち着きが無く順番が待てない
・遊びで順番を待てない
・些細なことでかんしゃくをおこす
学習障害(LD) ・読み、書き、計算能力の習得に著しく困難がある
高機能自閉性障害 ・社会性の欠如
・コミュニケーションの障害
・ひとつのことへの固執が異常に強い
境界域知的障害 ・発達を含めた全般的な知的発達の遅れ