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慈恵大学病院だより すこやかインフォメーション 〜大切なご家族のために〜

掲載記事 : No.11 Spring 2007

特集
 運動器の病気・障害・リハビリテーション
変形性関節症
  スポーツ障害肩に対する関節鏡視下手術
  腰痛に対する運動療法
  変形性股関節症の治療
  歴史シリーズ 鹿鳴館慈善バザー
  漢方外来スタート
  健康コラム
 ねむりと健康
  超音波診療センターについて

運動器の病気・障害・リハビリテーション

変形性関節症

整形外科 診療部長 丸毛啓史  膝や股関節の変形性関節症は、関節の痛みを主体とする臨床症状と単純X線写真で関節変形を認める疾患です。最新の調査では、介護が必要になった理由の18%が関節疾患であり、関節疾患の多くを占める変形性関節症の重要性が再認識されています。変形性関節症の患者数は国内に約700万人を超えると推定され、今後も増加が見込まれています。
 変形性関節症の手術療法には、関節鏡を使う小侵襲のものから人工関節置換術まで様々ですが、病状の進行程度と患者さんのニーズを考え合わせて決定しています。このうち人工関節置換術は、専門施設ではその20年生存率が90%を越えるようになっていますが、当科では更にコンピュータ支援システムを採用した最新の治療を行っています。

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スポーツ障害肩に対する関節鏡視下手術

整形外科(スポーツ・ウェルネスクリニック)診療部長 船崎裕記  近年、スポーツ文化の発展に伴い、肩に障害をきたす選手も少なくありません。とくに、反復性肩関節脱臼、いわゆる“脱臼ぐせ”や投球肩障害(くり返す投球などの動作による肩障害)は、肩の不安感や痛みのためにスポーツ活動に支障をきたす代表的な疾患です。
 手術が必要な場合、スポーツ従事者では、できるだけ低侵襲な手術で、術後早期のリハビリテーションが必要なため、関節鏡を用いた手術が積極的に行われています。これは約5mmの切開が2〜4箇所で済み、術後の痛みも軽減され、リハビリがスムースにいき、入院も短期で済むなどといった利点があり、スポーツ従事者に対するゴールドスタンダードな術式として確立されてきています。
 

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腰痛に対する運動療法

リハビリテーション科 診療部長 安保雅博  腰痛で困った経験のある人は非常に多く、おおよそ80%以上の方が何らかの経験をしているといわれています。身体を支える脊柱は真っ直ぐではなく、ところどころで彎曲しています。腰痛は脊柱彎曲の構造上の運命的なものかもしれません。
 腰痛の主症状は、腰背部痛、腰背筋の筋緊張、下肢へ放散痛による運動能力の低下などが挙げられますが、図に示しますように、いろいろな原因が考えられますので一度、腰痛がある方はMRIを含めた精査をされることをおすすめします。
 腰痛は、非常に再発の可能性の高い疾患です。腰痛に対する運動療法は、特に慢性腰痛に効果があり、『腰痛の再発予防には日頃のコンディショニング』が必要となります。運動療法のアプローチとしては、(1)リラクゼーションにより、痛みによる緊張状態からの開放、(2)伸張や授動により軟部組織の伸張、(3)筋力強化により筋力の回復をはかることが挙げられますが、個々によりアプローチのやり方が異なりますので、腰痛のある方で運動療法を希望される方は、外来受診をおすすめします。


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変形性股関節症の治療

整形外科 診療医長 大谷卓也  脚と骨盤を連結するのが股関節ですが、その軟骨が擦り減って変形し、痛みのために歩行が困難となるのが変形性股関節症です。
 当科では、まず、独自に開発した運動療法など手術をしない治療法を試み、あるいは、内視鏡を用いた低侵襲治療の適応を検討します。体重を支える骨盤側の受け皿(臼蓋)が生まれつき小さく、軟骨に無理がかかって擦り減りが始まってしまった場合には、寛骨臼回転骨切り術を行うことで、体重を広く効率よく受けられるようにして進行を防止します(図-1)。
 軟骨が完全に消失して高度な変形を呈する末期股関節症に対しては、人工股関節置換術により再び球形の股関節を形成し、生活に必要な関節の動きと痛みのない歩行を取り戻すようにします(図-2)
図-1、図-2