嫌悪体験が将来の学習ルールを調節する脳内神経メカニズムを解明 〜PTSDなどの治療法開発の新たな手がかりに〜
東京慈恵会医科大学総合医科学研究センター臨床医学研究所の遠山卓研究員と渡部文子教授らは、名古屋大学大学院医学系研究科の本田直樹教授らと共同で、恐怖などの嫌悪体験が脳内の学習ルールをどのように変化させるかを明らかにしました。
本研究では、脳幹の外側腕傍核(PB)から扁桃体中心核(CeA)へと至る経路に注目しました。マウスを用いた行動・生理学的解析および数理モデルを用いた解析によって、この経路が、経験に応じてシナプス可塑性を介してネガティブな情動価(嫌悪の強さ)を増強させることで、将来の学習ルールに影響を及ぼすことを実証しました。この成果は、情動価の調節という観点から、心的外傷後ストレス障害(PTSD)などの精神疾患の新たな治療法開発につながると期待されます。
本研究成果は、2025年7月4日に国際科学誌「Communications Biology」に掲載されました。