当院母子センターでは、難聴児を早期発見する目的で新生児の聴覚スクリーニング検査を施行しています。 この聴覚スクリーニング検査で要精査となったお子様は耳鼻咽喉科にて各種の精密聴力検査をおこない、難聴の有無を確定診断しています。 難聴、そして、難聴に伴う言語発達遅滞の発生が予想されるお子様に対しては、耳鼻咽喉科医と言語聴覚士が合同で治療とリハビリテーションをおこないます。
当部門で行っている検査
- 母子センター:自動簡易聴力検査
- 耳鼻咽喉科:精密聴力検査
聴力改善法の選択
- 中耳手術
- 補聴器装用
- 人工内耳手術
診療内容
新生児聴覚スクリーニング
先天性難聴は新生児約1,000人に対して1人の確率で罹患します。従来、先天性難聴は「ことばの遅れ」等で乳時期を過ぎてから発見されていました。 当院母子センターでは、先天性難聴児を早期発見・早期療育する目的で、希望者を対象にお子様の新生児聴覚スクリーニングを施行しています。 スクリーニング検査(自動OAEとAABRの二段階スクリーニング)にて要精査となったお子様は精密聴力検査をおこないます。 当院の新生児聴覚スクリーニング検査は年間約500人のお子様が受けられています。 このうち、約1~2%のお子様が要精査となり、精密聴力検査にて確定診断しています。当院は新生児聴覚スクリーニング後の精密聴力検査機関として日本耳鼻咽喉科学会より認定されています。
新生児聴覚スクリーニングの種類
自動OAE:自動耳音響放射スクリーナー
検査音に刺激された耳から生まれる反響音を検出して、機械が自動的に「正常(Pass)」または「要検査(Refer)」と結果判定をおこなう検査です。
AABR:自動聴性脳幹反応検査
検査音に刺激された脳幹部から生まれる電位を検出して、機械が自動的に
「正常(Pass)」または「要検査(Refer)」と結果判定をおこなう検査です。
精密聴力検査
新生児聴覚スクリーニングにて要精査となった方はA棟2階にある耳鼻咽喉科外来にて耳内所見(外耳道胎脂、中耳貯留液など)を確認した後に精密聴力検査(BOA、COR、ABR、ASSRなど)をおこない、難聴の有無と程度について確定診断しています。
精密聴力検査の種類
BOA:聴性行動反応検査
おもちゃの太鼓の音などを聞いたときにお子様が「びくっとする」などの反射・反応の様子を観察する検査です。
COR:条件詮索反応聴力検査
検査音といっしょにライトアップされるぬいぐるみにお子様が興味を持ったあとに、検査音のみで聴力を測定します。
ABR:聴性脳幹反応
検査音(クリック音)に刺激された蝸牛神経と脳幹部から生まれる弱い電位(μV;マイクロボルト)と反応時間(m sec;ミリ秒)を検査します。 低音から高音までの聴力評価は困難です。
ASSR:聴性定常反応
検査音(SAM音)に刺激された脳(脳幹部)が生みだすとても弱い電位(nV;ナノボルト)を検査します。低音から高音までの聴力評価が可能です。
聴覚発達検査
田中・進藤による聴覚発達チェックリストなどを用いて、お子様の月齢と音に対する反応や話すことばの状況を把握します。 また、「聞く力と話す力」以外の発達状況も把握するため、乳幼児精神発達診断検査(津守式)などの発達検査をおこない、必要により当院小児科と連携して療育しています。
原因診断
画像検査
耳鼻咽喉科領域を専門とする放射線科医がCT、MRI画像を読影しています。
遺伝子検査
先天性難聴の遺伝子診断を施行しています(平成24年度より保険診療として認可されました)。また、難聴原因遺伝子に関する信州大学耳鼻咽喉科を中心とした多施設共同研究にも参加しています。
参考:日本人難聴遺伝子データベース http://www.shinshu-u.ac.jp/faculty/medicine/chair/ent/nancho/deafgene1.html
療育
治療可能な伝音障害(耳小骨奇形、滲出性中耳炎など)は各種手術などを検討します。内耳性難聴など現在の医療では治療が難しいお子様は、補聴器装用による聴覚言語の獲得を目指します。補聴器を装用しても聴覚言語の獲得が困難な高度難聴のお子様は、人工内耳手術による聴力改善を検討します。補聴器・人工内耳装用下での聴覚リハビリテーションはA棟3階の言語聴覚療法室にておこなっています。
耳科手術実績(最近10年間)
ホームページをご参照下さい。
参考:東京慈恵会医科大学耳鼻咽喉科学教室ホームページhttp://www.jikei-ent.com/
母子センターに関わる診療スタッフの紹介
医師 櫻井 結華(さくらい ゆいか) 平成8年 東京慈恵会医科大学卒業 日本耳鼻咽喉科学会認定専門医 補聴器適合判定医師 補聴器相談医 |
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医師 宇田川 友克(うだがわ ともかつ) 平成10年 東京慈恵会医科大学卒業 日本耳鼻咽喉科学会認定専門医 補聴器適合判定医師 補聴器相談医 |
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医師 力武 正浩(りきたけ まさひろ) 平成12年 東京慈恵会医科大学卒業 日本耳鼻咽喉科学会認定専門医 補聴器適合判定医師 補聴器相談医 |
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医師 小森 学(こもり まなぶ) 平成16年 昭和大学卒業 日本耳鼻咽喉科学会認定専門医 補聴器適合判定医師 補聴器相談医 |
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医師 三瓶 紗弥香 (さんぺい さやか) 平成19年 東京女子医科大学卒業 日本耳鼻咽喉科学会認定専門医 補聴器適合判定医師 |
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医師 栗原 渉 (くりはら しょう) 平成21年 東京慈恵会医科大学卒業 日本耳鼻咽喉科学会認定専門医 |
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言語聴覚士 今川 記恵(いまがわ のりえ)
平成20年 愛知淑徳大学卒業 |
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言語聴覚士 近藤 由以子(こんどう ゆいこ)
平成23年 北里大学卒業 |