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慈恵大学病院だより すこやかインフォメーション 〜大切なご家族のために〜

掲載記事 : No.12 Summer 2007

特集
膀胱・直腸の病気と治療
直腸の病気と治療
  過活動膀胱〜オシッコが近い、我慢できない〜
  膀胱・直腸の検査(検尿と検便)
  子どもの便秘
  歴史シリーズ 《セント・トーマス病院医学校》
  総合母子健康医療センター
「小児心臓外科部門」について
  健康コラム
 ・高齢者の熱中症について
 ・子どもの熱中症について
  新任診療部長紹介

特集 膀胱・直腸の病気と治療

直腸の病気と治療

消化管外科 診療部長 柏木秀  大腸は結腸と直腸からなりますが、直腸は大腸の終末部で肛門へと続く消化管です。直腸の主な働きは、便の貯留と排泄の調節です。直腸の病気は良性のものから、悪性のものまでさまざまです。良性のものは、排便機能の病気(便秘など)から直腸炎、直腸(粘膜)脱(直腸の粘膜が肛門から脱出する病気)、直腸ポリープなどがあげられます。悪性の代表は直腸癌です。
 これらは、専門医の視診や直腸診、大腸内視鏡検査などで比較的容易に診断が可能です。治療は食生活の改善や便秘薬で治る病気から手術が必要な病気があります。手術は病気に応じて、内視鏡手術、経肛門手術、腹腔鏡手術、開腹手術まで最善・最新の術式を専門医が選択します。

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過活動膀胱〜オシッコガ近い、我慢できない〜

泌尿器科 診療医長 鈴木康之  歳をとると様々な体の不自由が生じてきます。なかでもおしっこが近くなったり(頻尿)、我慢できなくなる(尿意切迫)のは困りものです。これらを伴う病気として「過活動膀胱」が注目されています。この病気は男性では前立腺の病気、女性では支えが弱くなった尿道がその症状を悪化させていることもありますが、原因はよくわかっていません。
 しかし、歳とともに増加し50代では10人に1人程度ですが、70-80歳代になると半数近くにこの症状がみられることが専門学会の調査でわかっています。最近、この病気の研究がなされ、様々な有効な薬剤(抗コリン薬、α1遮断薬等)や治療法が開発されています。
 

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膀胱・直腸の検査(検尿と検便)

中央検査部 診療部長 海渡 健  検尿と検便は膀胱や直腸の病気を見つける大切な検査です。膀胱炎では細菌を攻撃するため尿に白血球が多数出てきますし、膀胱結石や膀胱癌では尿に血が混ざり潜血反応が陽性になり、顕微鏡で癌細胞が発見されることもあります。直腸の病気では便に血が混ざることが多く、便潜血反応という検査が行われます。検査の性能を上げるには尿や便のとり方や出し方に注意してください。
 例えば、ビタミンCを飲んでいると糖の反応が弱くなり、採尿後置きっぱなしにしていると潜血反応が弱くなってしまいます。血は便の表面につきやすいので、便の内部をごそっととるのではなく、表面を軽くこするようにつけるのがコツです。痛くない検査ですが尿や便の検査で多くのことがわかります。ご不明な点はお気軽に臨床検査技師にお尋ねください。

同じ便の潜血検査結果でもとる人でこんなに違います。便の表面をこするようにとってください(臨床検査技師 湯本春野)。

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こどもの便秘

小児外科 芦塚修一  便秘症は、小児外科医が日常診る疾患のなかで、極めて多い病気のひとつであり、小児の腹痛の原因として、最も多いといわれています。原因としては、ヒルシュスプルング病のような腸管の神経節細胞の異常によるものや脊髄髄膜瘤などの中枢神経障害や仙骨部腫瘍や肛門狭窄のような器質的要因、その他、内分泌異常や心因性のものおよび薬剤によるものがあります。
 このような原因が明らかな便秘を除いたものは慢性便秘として取り扱われています。原因の診断には、腹部および直腸肛門の診察のほかに注腸造影や直腸肛門内圧検査などの検査が重要です。原因疾患があるものはその疾患に対する治療をすすめますが、慢性便秘症のなかにも難治性のものもあり、治療の前にまず、本人と親に対する教育や排便指導を行い、排便の状況に合った適切な薬物治療(浣腸・下剤)が必要です。
図-1、図-2