診療科・部門

小児心臓外科:特色と基本方針

診療部門の概要

小児心臓外科部門は心臓外科学講座内の小児心臓外科専門チームにより構成される小児外科系診療部門として、総合母子健康医療センター内特設診療部門として平成16年4月1日付けで新設されました。

小児心臓外科模式図

診療面では新生児未熟児を含む小児から成人先天性心疾患までの広範囲の先天性心臓大血管疾患を対象に、成人心臓外科チームとの相互協力はもとより産科新生児科、循環器小児科、小児外科系各診療科との密接な連携のもと外科治療に当たっています。また新生児心臓疾患の緊急症例にも24時間緊急体制を整えて対応しています。

特色と基本方針

診療の基本方針としては手術後数年の近い将来のみならず「生涯にわたる患児の明るい未来と自立」を目標に手術成績のみにとらわれない、高い生活の質の向上に寄与するような手術治療を心がけています。このため当科では

  1. 可及的早期に根治手術を達成し生理的循環への早期順応を図ります。
  2. 自己組織を有効に使用しできるだけ人工物を用いない再建術式を優先します。
  3. 重症複雑心疾患例において新生児期からの適切な段階的手術を時期を逸せず行います。
  4. 循環期小児科と密接に連携をとり三次元CTなどのよる詳細な術前形態診断、カテーテル治療と手術を組み合わせたハイブリッド治療を推進しています
  5. 小切開手術を積極的に行う方針です
  6. 術中の補助装置の改良・優れた心肺保護法の開発
    人工心肺前後の 血液浄化濾過法MUFや統合的血液心筋保護法などの新たな心臓手術補助手段の開発と臨床応用を推進しています

手術方針の概要

  1. 未熟児心臓手術
    未熟児動脈管では内科的治療後も開存を認める例では、体重によらず動脈管結紮術を施行しています(最低体重368g)
  2. 新生児期から乳児期早期姑息的手術:随時緊急対応をとります
    ・大動脈縮窄症、大動脈弓離断症にたいする緊急大動脈弓再建手術
    ・重症先天性大動脈弁狭窄に対する心臓カテーテル的治療と外科的大動脈弁切開
    ・複雑先天性心疾患における体肺動脈短絡術(シャント手術)、肺動脈絞扼術
  3. 新生児期一期的心内修復術 ・総肺静脈還流異常症修復術および完全大血管転位症に対する大血管スイッチ手術
    ・総動脈幹遺残症根治手術
    ・大動脈縮窄症、大動脈弓離断合併する複雑心疾患における一期的心内修復術の施行
  4. 非チアノーゼ性心疾患修復術 心室中隔欠損症、心房中隔欠損症、心内膜床欠損症(房室中隔欠損症)、動脈管開存症など:肺高血圧症合併例では体重によらず生後3-5ヶ月以内の乳児期早期の根治手術を原則としています
  5. チアノーゼ性心疾患心内修復術
    ファロー四徴症修復術、完全大血管転位症III型(ラステリー手術)、両大血管右室起始症心内修復術などでは可及的に乳児期後期(1歳未満)での根治手術を目指しています
  6. 単心室症に対するフォンタン手術
    新生児乳児期の段階的姑息術に続いて生後4-10ヶ月を目安にグレン手術、さらに1-2歳で最終フォンタン手術を施行する方針です
  7. 先天性弁膜症に対する自己弁温存手術
    人工弁置換術を可及的に回避する方針で自己弁温存手術を第一選択として僧帽弁に対しては弁形成術、また先天性大動脈弁疾患についてはロス手術すなわち自己肺動脈弁による大動脈弁置換術を積極的に施行しております。