下部消化管外科 疾患解説

大腸癌

大腸癌は結腸癌と直腸癌に分けられ、その進行度は壁深達度(壁内癌浸潤の深さ)、リンパ節転移の程度および肝・肺などへの転移の有無によって決定されます。
大腸腸管壁の粘膜内に留まっている癌を早期癌と呼び、大腸腸管壁の筋層内に少しでも浸潤している癌を進行癌と呼んでいます。よって進行癌にはさまざまな進行度の癌あります。早期癌は粘膜筋板を超えないm癌と超えるsm癌にさらに分類されます。m癌は病変の内視鏡的切除で完治し追加治療の必要性はありませんが、sm癌でリンパ管や静脈に癌の浸潤がみられた場合あるいは1000μm以上の癌浸潤がみられた場合には外科的手術が必要です。手術が必要な早期癌に対しては腹腔鏡下手術が一般的に行われています。
進行癌でリンパ節転移がみられない癌をstageⅡ、リンパ節転移がみられた癌をstageⅢ、肝・肺などの転移がみられた癌をstageⅣとして分類しています。
stageⅣ(多臓器転移を伴う)あるいは再発癌に対しては全身化学療法を外来通院で行っています。FOLFOX, FOLFIRIが基本ですが、血管新生阻害薬や分子標的薬を併用して抗腫瘍効果を高めています。何も治療を行わなければ余命が6か月程度であった切除不能再発大腸癌が外来化学療法を行うことで約2年の延長する症例が増えています。

腹腔鏡下手術

潰瘍性大腸炎

大腸や小腸の粘膜に慢性の炎症または潰瘍を引き起こす原因不明の病気をまとめて「炎症性腸疾患(IBD:inflammatory bowel disease)」と呼びます。潰瘍性大腸炎もこの炎症性腸疾患のひとつで、大腸の粘膜がおかされ、そこに浅い潰瘍やびらん(ただれ)が多発する病気です。
潰瘍性大腸炎のほとんどの患者さんは(粘)血便や血性下痢を起こして病院に訪れます。症状が似ている疾患として感染性腸炎などがあり鑑別検査が必要です。 潰瘍性大腸炎の治療には、薬物療法、食事療法、手術がありますが、基本的には薬物療法が行われます。薬物療法は5-ASA製剤を基準薬として、重症度や病変の範囲、過去のお薬への反応性などに応じて、副腎皮質ステロイドや免疫抑制剤を組み合わせて使用するコンビネーション療法が行われますが、内科的治療の効果がなかった場合には手術になります。
潰瘍性大腸炎は炎症が起こる部位が大腸に限られますので、基本的な手術としては大腸を全て摘出する術式が行われます。以前は人工肛門をつくる方法が行われてきましたが、現在では肛門を温存する術式が主流になっています。大腸全摘後、小腸で便をためるための袋(パウチ)をつくり、これと肛門(管)をつなぐ方法が行われています。大腸全摘術は大きな手術ですが、当院では低侵襲な術式として腹腔鏡下大腸全摘術を熱心に行っています。

クローン病

大腸や小腸の粘膜に慢性の炎症または潰瘍を引き起こす原因不明の病気をまとめて「炎症性腸疾患(IBD:inflammatory bowel disease)」と呼びます。クローン病もこの炎症性腸疾患のひとつで、消化管(食道、胃、小腸、大腸)のどこでも発生する可能性がある病気です。
クローン病のほとんどの患者さんは腹痛や貧血のため病院に訪れます。合併する疾患としては痔瘻が高頻度です。クローン病の治療には、栄養療法、薬物療法、手術がありますが、基本的には栄養療法が行われます。薬物療法では潰瘍性大腸炎に準じた薬剤が用いられますが、効果はあまり期待できず、狭窄症状が強くなった場合には手術になります。
手術は狭窄部腸管切除が基本ですが、再発による再狭窄の頻度が高いため、残存腸管を温存した狭窄形成術やバイパス術も行われます。 クローン病は再発のため再手術を数回行う場合が多く、当院では低侵襲な術式として腹腔鏡下腸管切除術を熱心に行っています。