学長挨拶
医療の未来を創る 若い皆さんに期待しています
140年を超える本学の長い歴史。
その間、私たちが生きるこの社会と科学技術は長足の進歩を遂げ、医療を取り巻く状況も大きく変わりました。
しかし、本学が育成したい人物像は、まったく変わっていません。
それは「患者さんに寄り添うことができる医療人」です。
人間をみつめ、社会への広い視野を持った心豊かな医師、看護師を育てます
病気やけがの診断・治療・ケアはもとより、患者さんがどのような悩み・苦しみを抱えているのか…そこまで視野に入れて「診る/看る」ことができる医師や看護師を社会に送り出すことが本学の使命です。
こうした本学の姿勢は、明治維新後に英国セント・トーマス病院医学校(現・ロンドン大学キングスコレッジ)に留学した学祖・高木兼寛に端を発しています。当時の日本では「研究室医学」とされるドイツ医学が主流でした。これに対して英国医学は患者さんの近くにある「病院医学」であり、人道主義・博愛主義に基づき、病に苦しむ人間を中心として、その周りをとりまく家族や社会にも目を向ける伝統を持つものでした。さらにセント・トーマス病院にはナイチンゲールが設立した世界最初の看護学校があり、医師と看護師が共に学び、働いていました。高木はこのような英国の医学・医療に感銘を受け、帰国後、本学の前身となる教育機関と病院を創設しました。建学の精神「病気を診ずして病人を診よ」には「医学的力量のみならず、人間的力量を備えた医療人を育成したい」という高木の強い思いが込められています。
社会の大きな期待に応え、人類の未来を明るく照らす医療のために
新型コロナウイルスのパンデミックに際しては、多くの医師、看護師が高いリスクと過酷な環境の中で感染症治療に従事し、患者さんの生命を救ってきました。率先してこうした利他的な行動を取れることが医療人として欠かせない資質です。
一方で医学研究者たちのたゆまぬ努力の成果として登場したmRNAワクチンが、ウイルス感染や重症化抑止に大きな効果を発揮しました。現在、世界中の研究者が新しい治療薬の開発に力を注いでいます。このように医学研究の進展はそれまで救えなかった多くの生命を救ってきました。
目の前の患者さんを対象とする「医療」と、世界中の人々を病から救う「研究」。いずれも人々の健康を守るために欠かせません。病に苦しむ人を救うことを目的として、人間中心の医療や研究にまい進する姿勢は、AIやロボットがどんなに進歩しても輝きを失うことはないのです。
多様な個性を歓迎し、医療の道を志す皆さんを全力で応援します
今の時代、あえてリスクと社会的責任が大きい職業でもある医療の道を志す若い世代の方々は、それだけで医療人として欠かせない利他的な心を備えていると思います。
また、社会がダイバーシティ(多様性)を志向する今、医療界全体にも多様性が必要不可欠な時代となりました。
本学は性別やルーツはもちろん、幅広い出身地、多彩な個性や経歴を持つ皆さんを歓迎します。
来年度、私を含む本学教員、ならびに病院実習を行う附属病院の医師、看護師は医療への強い志と多様な個性を持った皆さんにお会いできるのを楽しみにしています。そして自分たちが持つすべてを後輩のために分け与える心構えでいます。未来の医療を創っていくのは、若い世代の皆さんなのですから。